米国務長官「武漢研究所の複数の研究員がコロナともとれる病気にかかっていた」と、WHOの現地調査を後押し
U.S. Says Wuhan Researchers Fell Ill in Fall 2019, Calls for Transparency
「疑惑の施設」、武漢ウイルス学研究所(2020年5月) REUTERS
<だからコロナウイルスは人工的に作られたと主張するトランプ政権の疑念はどこまで裏付けられるのか>
マイク・ポンペオ米国務長官は、2019年秋に中国の武漢ウイルス学研究所(WIV)で、新型コロナウイルス感染症と同様の症状を呈する疾患にかかった研究員がいたと主張。今回のパンデミック(世界的大流行)の原因についてより詳しい説明を中国に要求するよう、WHO(世界保健機関)に強く求めた
新型コロナウイルスの発生源を探るWHOの調査団は、1月14日に中国湖北省武漢市に到着。当初の予定より数カ月遅れて調査を開始した。AP通信によると、調査団は総勢10人程度のグローバルな研究チームで、メンバーはアメリカ、オーストラリア、ドイツ、日本、ロシアから参加している。
ポンペオは15日に「調査団の重要な仕事への支援」を表明し、「2019年の研究所内の活動」について調査を求める声明を発表した。
「アメリカ政府は、最初とされる感染確認例より前の2019年秋の時点で、WIV内に新型コロナウイルス感染症および一般的な季節性疾病のどちらとも一致する症状を呈した研究者が複数存在していたと信じるに足る理由がある」と、ポンペオは語った。
「これは、WIVのスタッフと研究員には、新型コロナウイルスまたはSARS(重症急性呼吸器症候群)関連ウイルスの感染はなかったというWIV上級研究員石正麗(シー・ジェンリー)の公式発表の信頼性に疑問を投げかけるものだ」
本誌はこの件について電子メールで駐米中国大使館にコメントを求めている。
研究所への根深い疑念
中国政府は積極的な封じ込め政策で国内のウイルス感染を大幅に縮小させているが、アメリカでは政治家を含む多くの人々が、中国は適切な情報を開示せず、初期段階でウイルス感染拡大の深刻さを軽んじる態度をとった、と非難している。
新型コロナウイルス感染症は、2019年12月に武漢市で初めて確認され、その後瞬く間に世界に広がり、1月16日夜の時点で、世界中で200万人以上が死亡している。
中国当局は当初、パンデミックは武漢の生鮮市場から始まったと考えていたが、中国国立感染症対策センターは2020年5月に市場起源説を否定した。「市場も感染拡大の犠牲にすぎなかったことが判明した」とセンターの高福(ガオ・フー)主任は、中国の国営メディアに語った。
当時、ドナルド・トランプ大統領は、ウイルスがWIVで発生したことを示す信頼度の高い証拠を見たと主張した。ポンペオはすぐにトランプの発言を繰り返し、WIV起源説を証明する「大量の証拠」があると述べた。
「これまでのところ、一流の専門家たちは、ウイルスは人工的に作られたと考えているようだ。現時点でそれを信じない理由はない」と、ポンペオは昨年5月、ABCのニュース番組で語った。