世界でワクチン接種が進むなか、「免疫パスポート」は有効?の議論が再燃
新型コロナウイルスの免疫パスポートのイメージ...... Tanaonte-iStock
<史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている...... >
世界初の新型コロナウイルスワクチンの集団接種が2020年12月8日に英国で開始されて以来、米国、ドイツ、フランス、シンガポールなど、世界60カ国で8640万回以上の接種が完了している(2021年1月28日時点)。
史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている。
検疫措置を免除し、国境を超えた往来を後押しするのが狙い
「免疫獲得証明書」は、2020年春、新型コロナウイルスの急速な感染拡大により世界各国で都市封鎖の措置が講じられた際、出口戦略のひとつとして提案された。新型コロナウイルス感染症から回復して免疫を獲得した人から優先的に社会経済活動に復帰させるというアイデアだ。
北欧アイスランドでは、2021年1月から、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した国民に対して「ワクチン接種証明書」を発行している。渡航先で「ワクチン接種証明書」を提示することで検疫措置を免除させるなど、国境を超えた往来を後押しするのが狙いだ。
世界最速のペースで集団接種をすすめているイスラエルでも、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した人と新型コロナウイルス感染症から回復した人に「グリーンパスポート」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行し、イベントの参加や外食、海外への渡航などを認める案を検討している。
観光立国では、今夏のバカンスシーズンに向けて、感染拡大のリスクを抑制しながら、多くの観光客を迎えるための方策を模索している。ギリシアのキリアコス・ミツォタキス首相は、2021年1月、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に、欧州連合(EU)全体でワクチン接種証明書を導入するよう促す書簡を送った。
スイスの非営利団体「コモンズプロジェクト」や世界経済フォーラムらは、個人のプライバシーを保護しながら、渡航先の検疫で必要な健康データを共有できる世界共通の電子証明書「コモンパス」を共同で開発している。健康状態申告書やPCR検査証明書、ワクチンの接種履歴などのデータを記録できる仕組みだ。
World Economic Forum