培養肉は次のパンデミックを防ぐのだろうか
シンガポールで販売が承認された培養肉...... Eat Just
<パンデミックを引き起こす感染症の多くは動物由来のものだ。これから成長が見込まれる培養肉が、パンデミックを防ぐことできるだろうか...... >
シンガポール食品庁(SFA)は、2020年12月1日、可食部の細胞を人工的に組織培養した「培養肉」の販売を世界で初めて承認。
12月21日には、シンガポールの会員制レストラン「1880」で米スタートアップ企業イート・ジャストが製造する培養鶏肉を使ったチキンナゲットが一般の消費者に初めて提供された。
培養肉は、環境負荷を大幅に軽減できるのが利点。さらに......
培養肉の生産は、動物を屠殺する必要がなく、食用動物を肥育するよりも環境負荷を大幅に軽減できるのが利点だ。
英オックスフォード大学と蘭アムステルダム大学の研究チームが2011年6月に発表した研究論文によると、従来の食肉生産に比べて、土地利用を99%、水消費量を96%、エネルギー消費量を45%下げ、温室効果ガスの排出量を96%抑えられるという。
動物からヒトへ、ヒトから動物へと伝播でき、同一の病原体によってヒトとそれ以外の脊椎動物が罹患する「人獣共通感染症」は、しばしば家畜が発生源となっている。2009年に世界的に流行した新型インフルエンザは、ブタ間で流行していた豚インフルエンザウイルスが発生源とみられ、中東呼吸器症候群(MERS)は、ヒトコブラクダが保有宿主(感染源動物)だ。
2020年初から世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルスの発生源は現時点で特定されていないが、新型コロナウイルスに感染した家畜のミンクがスペインやオランダで見つかったほか、11月には、デンマークで、家畜のミンクからヒトに感染した新型コロナウイルスの変異株が確認されている。
国際家畜研究所(ILRI)で人獣共通感染症の研究を主導する英グリニッジ大学のダリア・グレース教授は、独メディア「ドイチェ・ヴェレ」の取材に対し、「次のパンデミックは『もし起こったら』ではなく『いつ起こるか』の問題だ。4ヶ月ごとに新たな病気が見つかっており、そのペースは加速している。これらの多くは動物由来のものだ」と警鐘を鳴らす。
食肉生産と消費拡大によって、パンデミックを引き起こすおそれがある
また、独ボンを本部とする政府間組織IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が2020年10月に発表した報告書では、「グローバル化した食肉生産とその消費のように、人々の消費活動とグローバル化した農業の拡大や貿易によってパンデミックを引き起こすおそれがある」と指摘し、食肉消費量の減少につながる税制を創設するよう求めている。