最新記事

米政治

「再選を阻止せよ」浜田宏一・安倍政権元内閣参与がトランプに三行半

PREVENTING “TRUMP 2024”

2021年1月15日(金)17時20分
浜田宏一(元内閣官房参与、エール大学名誉教授)

この4年間、トランプの宣伝は主に彼のメガホン代わりのFOXニュースに委ねられてきた。しかし最近、トランプは選挙報道で十分な忠誠心がないとFOXに怒りをぶつけ、ニュースマックスやワン・アメリカ・ニュースのようなより過激な報道機関と組むようになった。

このようなメディアは、トランプの政界へのカムバックに道を開きかねない。彼は既に2024年に再び大統領選に出馬することを検討しており、娘のイバンカの政治的野心についても臆測が飛び交っている。

しかし、アメリカにおける右派ポピュリズムやナショナリズム、権威主義の衣をまとうのがトランプ一族である必要はない。彼の家族以外からも、この役割を担う人物が現れる可能性があり、その人物はおそらくトランプよりもはるかに巧妙だ。

このリスクを軽減する最善の方法は、アメリカの政治的言説をゆがめている認識のギャップを解消し、アメリカ人をトランプの振りまく虚構から現実に引き戻すことだ。問題はその方法である。

ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズのような伝統ある新聞やCNNのような主要テレビネットワークなど、既存の多くのメディアは事実とデータに基づいたまともなジャーナリズムを提供している。嘘の世界を真の世界に戻す正統な声だが、多くの人々が耳を貸さない。

不毛な「事実」論争をやめる時

トランプは「主流メディア」が過激な「進歩的アジェンダ」を推し進めていると非難する。しかし、そのアプローチは民主主義そのものであり、特に1950年代から60年代にかけての公民権運動以来、アメリカ社会の進歩に大きく貢献してきた。

トランプの言う「主流メディア」の過激な「進歩的アジェンダ」が民主主義に貢献するものだとしても、古い差別的な制度の恩恵を受ける人々は進歩に抵抗する。そして自分たちの立場が合理化され、擁護される「代替現実」を提供する政治指導者やニュースソースを受け入れ、共有するようになる。

これはアメリカ特有の現象ではない。人口の高齢化が急速に進む日本でも、女性の労働参加の増加に明白な利益があるにもかかわらず、男女平等は遅々として進まない。

8年近く前、当時の安倍晋三首相は「アベノミクス」と呼ばれる経済活性化戦略の柱として、女性の活躍を目的とした「ウーマノミクス」政策を打ち出した。しかし社会的な抵抗が大きく、その実現までにはまだ長い道のりが必要である。

【関連記事】無邪気だったアメリカ人はトランプの暴挙を予想できなかった

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、4会合連続利下げ 一段の緩和排除せず

ビジネス

米新規失業保険申請、1.6万件減の20.7万件 予

ビジネス

米GDP、24年第4四半期速報値は+2.3%に減速

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 4
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 7
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 8
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 9
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中