総ざらいバイデンの外交10大課題 最も変化が大きいのは?
BIDEN’S 10 FOREIGN CHALLENGES
2.疎遠な核大国ロシア
トランプ自身はロシアのプーチン大統領に親近感を抱いていたが、その政権内にはロシアの孤立化を狙う強硬派が多かった。アメリカを含む諸外国の選挙への介入、偽情報の拡散、ウクライナでの戦争などでロシア政府が果たす役割を問題視し、経済制裁を強化してきた。
バイデン政権では経験豊かなロシア専門家が要職に就き、引き続き断固とした姿勢を打ち出すと予想される。
2月5日にはロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。新STARTは世界の二大核武装国を縛る核軍縮条約の最後のとりでだ。バイデンもロシア側も既に、その期限延長に前向きな姿勢を示している。
ほかに、少なくとも12の米連邦機関に対するロシアからのハッキング、ノルドストリーム2(ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインで、アメリカの抵抗むなしく完成に近づいている)、ロシアの反政権指導者アレクセイ・ナワリヌイの身柄拘束などの問題もある。
3.イランとの協議再開
トランプはオバマ政権時代に締結されたイランとの核合意を離脱する公約を貫いたが、バイデンも負けじとイラン外交の再開を明言してきた。
だが、核合意は今や形骸化し、イランが核兵器開発に向けて着々と準備を進めるなかで、オバマ政権時代の状態に戻すには核合意を復活するだけでは済まないだろう。
バイデンは昨年9月、「イラン政府には外交再開につながり得る道を示す。イランが核合意を遵守するようになれば、アメリカは継続交渉の出発点として核合意に復帰する」と述べたが、イランは現在、核合意で定めた低濃縮ウラン貯蔵量の上限の12倍を超えた量を保有しており、交渉の場では有利な立場にいる。
バイデンが国家安全保障担当の大統領補佐官に起用したジェイク・サリバンは、新政権はトランプがイランとその代理勢力に科した制裁措置の一部を撤回する可能性があることを示唆している。バイデンとしては核合意への復帰をちらつかせて、共和党政権が重視してきたイランの弾道ミサイル能力増強を阻止する手段としたいところだ。
一部の元政府高官は、バイデンはトランプ政権時代の制裁を利用してイラン政府との交渉には厳しい姿勢で臨むだろうとの見方を示している。
4.イラクからは手を引く?
バイデン政権のイラクとアフガニスタンにおける行動計画は、中東からの米軍撤退を目指したトランプの政策を延長したものになるだろう。
トランプやオバマと同じく、バイデンも「終わりなき戦争」を終わらせると約束し、この20年で膨らんだ中東における駐留米軍の規模縮小に言及している。
だが約束するのは簡単だが、実際に戦争を終結させるのは難しい。バイデンは昨年9月、「軍の規模削減については賛成だが、問題がある。テロ(と過激派組織「イスラム国」〔IS〕)については今なお警戒が必要だ」と述べた。
トランプ政権は、ISが掌握していた地域を奪還し、同組織に大打撃を与えたことでは手柄を誇っていいかもしれないが、バイデン政権に残された中東はいまだ不安定だ。