最新記事

韓国

韓国・文政権、不動産政策とコロナ対策の失敗で、政権末期の死に体に?

2020年12月28日(月)14時35分
佐々木和義

失敗続きの不動産政策

韓国政府は不動産高騰の原因は住宅不足にあり、供給を増やせば価格が安定すると考えた。2019年12月、複数住宅を保有する青瓦台(大統領府)の高官に対し、所有する住宅1軒を除いて他を処分する勧告を出した。住宅供給を増やすため「青瓦台の高位公職者が先頭に立って模範を示す」趣旨だったが、不動産価格は高騰を続け、また、政府高官が複数住宅を所有していることに対する批判が高まり、20年7月、再度、勧告を出し、また複数住宅の所有制限を国会議員や政府機関の局長級以上に拡げて、該当者から不満が出た。

国会議員は地元選挙区とソウルに住宅を保有している人が多く、公務員も2012年の政府機能移転でソウルに家族を残して移転先でも住宅を購入し、複数所有者となった人が少なくなかった。

2020年11月、政府は新型コロナウイルスの拡散で打撃を受けたホテルや雑居ビルなどを買い取って賃貸住宅に改造し、供給する対策を打ち出した。しかし、ホテルや雑居ビルは、生活インフラが整っていない商業地に集中する。面積が狭く壁が薄いホテルの部屋で暮らせるのかと批判する声が上がり、ホテル乞食を意味する「ホゴ」という新語が登場した。

韓国政府はまた、空き家となっている小型集合住宅を買い取って賃貸住宅として供給すると発表したが、職場から遠く教育環境が悪いなどの理由から空き家となっている物件が多く、住宅不足の解消には役立たないという声が広がった。

支持率急落、政権末期のレームダックが本格化?

11月23日、与党・共に民主党の陳善美(チン・ソンミ)議員が韓国土地住宅公社の公共賃貸住宅を視察して「自分の家と違いはない。マンションに住む幻想を捨てるべきだ」と発言して政府の住宅対策を擁護したが、議員自身はソウル中心部の新築高級マンションに居住している。フランス革命の頃、「パンがなければ、ブリオッシュを食べればよい」と話したという逸話があるマリー・アントワネットになぞらえ、「マリー・チントゥワネット」と揶揄された。

12月17日、文在寅大統領は、京畿道華城市にある公共賃貸住宅を視察した。1時間の視察のために、内装工事や家具レンタル代など、4億5000万ウォン(約4300万円)を支出し、数日間に渡って突貫工事が進められたことが明らかになり、「庶民の現実を直視しない大統領のためのショー」と批判する声が上がった。

12月28日に韓国世論調査会社リアルメーターが発表した文大統領の支持率は36.7%、不支持率は就任以来最高の59.7%となった。与党政治家の相次ぐ不祥事や新型コロナウイルス対策の失敗など、政権末期のレームダック、死に体が本格化するという分析が出ている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中