最新記事

感染症対策

韓国、深刻なコロナ第3波へ超強硬対策 まさかの裁判所閉鎖や検察の逮捕停止まで

2020年12月26日(土)21時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

凶悪犯罪以外は逮捕せず!?

拘置所のクラスターと言えば、李明博元大統領が収監されているソウル東部拘置所でも、収監者・看守・職員など288人の感染者を出し問題となった。最高裁はこの状態をなんとかすべく、22日から1月11日の3週間、全国の裁判所を休廷するという大胆な決断を発表した。もちろん、緊急性の高い事件の裁判は行われるが、小さな事件は来年にもち越される。

これに続き、なんと検察庁も凶悪犯罪を除くその他の犯罪の拘束を自制することを発表している。さらに、事件に緊急性が無ければ逮捕も自制するという。また、罰金の未払いによる指名手配犯の逮捕も、500万ウォン以下は逮捕停止される。逮捕される人が減れば、拘置所での人数も減りクラスター発生の抑制になるかもしれないが、その分街中には犯罪者があふれると考えると、日本では想像できない思い切った決定である。

コロナ禍でも韓国に残り暮らしている外国人たちも、感染第3波への警戒のあおりを受けている。代案学校と呼ばれる北朝鮮から脱北してきた学生たちも多く通っているフリースクールのような学校でも、リモート授業に切り替えられたが、脱北学生のほとんどがパソコンの操作に戸惑い、授業を受けづらい状況にあるという。ある学生はパソコン画面のキャプチャーの仕方がわからず、スマートフォンで画面を1枚ずつ撮影し勉強している状態だ。

在韓米軍は基地外での飲食を禁止

在韓米軍も19日より警戒レベルを引き上げ、米軍基地の外の施設(クラブ、サウナ、デパート、飲食店など)の使用を禁止する体制に入った。さらに、移動制限も発令され、旅行なども自粛するように言い渡されている。

実はこの発表の10日ほど前、平沢市にある米軍基地内でマスク無しのダンスパーティーが開催されていたことが発覚し韓国民の怒りを買っていた。ダンスパーティーの様子がSNSなどで拡散されて発覚すると、韓国の市民団体がこれに抗議し、米軍基地前でデモを行った。その後、米軍は平沢市へ謝罪している。

今回のコロナ対策強化期間は、在韓外国人労働者への差別意識を浮き彫りにする例も発生している。忠清南道にある洪城郡では、対策強化のお知らせチラシに「外国人労働者居住地域、コールセンターなどハイリスク事業場集中点検など防疫管理を徹底的にする」という一文が載せられていた。「外国人労働者の感染率が高いという根拠がない状況で、外国人労働者の住居をわざわざ記載することは、外国人労働者に対する差別ではないか」と批判が集まりすぐに削除される騒ぎとなった。

感染者が急増する第3波到来の中、ワクチン確保が遅れたことなどで政権が批判されるなど、日韓の感染状況と対策はかなり似た状況だ。ただ、韓国は思いついたら即実行する「パルリパルリ精神」があり、行動力がある。今回のスキー場の営業停止などはその実例といえるだろう。

ただ、先走りすぎてしまうと、今度はそのしわ寄せがどこかに必ず出てきてしまう。処理できる程度のしわ寄せならいいのだが、国民の生活に取り返しの付かない衝撃が走る可能性もあり、そのバランスの調整が難しい課題となるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、がれきから女性救出 捜索活動続く

ビジネス

中国3月製造業PMIは50.5に上昇、1年ぶり高水

ビジネス

金現物、3100ドル突破し最高値 米関税懸念で安全

ワールド

グリーンランド首相「米は島を手に入れず」、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中