最新記事

再生能力

「大型ワニにも尾を再生する能力がある」との研究結果

2020年12月8日(火)17時30分
松岡由希子

トカゲやヤモリのように、ワニも再生能力が備わっていた...... Alexander Morales-iStock

<小型の爬虫類には、再生能力があることは知られているが、ワニの大型種アリゲーターにも、このような再生能力が備わっていることが明らかとなった......>

トカゲやヤモリなどの小型の爬虫類には、外敵から身を守るために尾を切り離して逃避する「自切」がみられ、欠損した部分はやがて再生する。このほど、ワニの大型種アリゲーターにも、このような再生能力が備わっていることが明らかとなった。

体長の約18%相当まで尾の再生能力があった

米アリゾナ州立大学(ASU)とルイジアナ州野生生物漁業局(LDWF)の共同研究チームは、体長が14フィート(約426センチ)にも達するアメリカアリゲーター(ミシシッピワニ)の尾の再生能力について調べ、2020年11月18日、オープンアクセスジャーナル「サイエンティフィック・リポーツ」で一連の研究成果を発表した。

これによると、若いアメリカアリゲーターには、最大で体長の約18%に相当する0.75フィート(約23センチ)まで尾を再生する能力があることがわかった。研究チームは「尾の再生能力のおかげで、アメリカアリゲーターは濁った沼のような環境でも生息しやすいのではないか」と考察している。

mauoka1208b.jpg

Alexander Morales-iStock

研究チームは、死後間もない野生の若いアメリカアリゲーターを解剖するとともに、レントゲン写真やMRI(磁気共鳴画像)の画像で再生した尾の構造を調べた。その結果、再生した尾には骨格筋がなく、軟骨でできた骨格が血管や神経と絡み合った結合組織で囲まれるという複雑な構造になっていた。

mauoka1208c.jpg

元の尾と再生された尾の解剖学的な違い (アリゾナ州立大学)

トカゲの尾は骨格筋が再生されるが......

研究論文の筆頭著者でアリゾナ州立大学の博士課程に在籍するシンディー・シー氏は、この結果について「軟骨や血管、神経、鱗片が再生する点ではトカゲの尾の再生に関する過去の研究結果とも一致しているが、トカゲの尾は骨格筋が再生されるのに対して、アメリカアリゲーターでは骨格筋が再生されず、結合組織がこれを代替しているのは意外であった」としている。また、「アメリカアリゲーターでは、再成長した尾が同じ構造内で再生と創傷治癒の両方の兆候を示している」、「今後の研究では、なぜ爬虫類のそれぞれの種で再生能力が異なっているのかを解明することが重要だ」と述べている。

アリゲーター、トカゲ、ヒトはいずれも、脊椎動物のうちの有羊膜類に属する。トカゲだけでなく、アメリカンアリゲーターにも大きく複雑な尾を再生する能力があることが明らかとなったことで、再生能力の歴史のさらなる解明やその将来的な応用可能性を探る手がかりとなることが期待されている。

新たな治療法の開発、再生医療の発展にもつながる......

研究論文の責任著者でアリゾナ州立大学のクスミ・ケンロウ教授は「アリゲーターと鳥の祖先は恐竜から約2億5000万年前に分岐した。鳥には再生能力がない一方、アリゲーターが尾を再生する能力を持つことは、『進化の過程でいつ再生能力が失われたのか』という新たな問いを投げかけている」と指摘。

また、研究論文の共同著者でアリゾナ州立大学のレベッカ・フィッシャー教授は「それぞれの動物が組織をどのように修復・再生しているのかを解明することで、新たな治療法の開発にもつながるだろう」と述べ、再生医療の発展にも寄与するのではないかと期待を寄せている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日本のインフレ率は2%で持続へ、成長リスクは下方に

ビジネス

三菱商事、26年3月期に最大1兆円の自社株買い 年

ワールド

韓国、関税巡り米当局者との協議模索 企業に緊急支援

ビジネス

トランプ関税で実効税率17%に、製造業「広範に混乱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中