警官の暴力は許せないが、警官の顔撮影は禁止するというマクロンの二枚舌
Clip of French Police Beating Black Man Watched 14M Times
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暴行の一部始終が監視カメラに捉えられていた FRANCE 24 English/YOUTUBE
<警官による黒人暴行の動画の視聴回数は1400万回を越えたが>
フランスで、複数の警察官が黒人男性に暴力を振るう動画がネット上で拡散し、これまでに1400万回視聴されている。エマニュエル・マクロン率いる政府は、警察官の撮影を禁じる法案の成立を目指しているが、動画の拡散が法案の審議にも影響を及ぼすことになりそうだ。
オンラインニュースサイトの「ループサイダー」は11月26日、監視カメラの映像を公開。同21日に撮影された映像には、音楽プロデューサーのミシェル・ゼクレアがパリにあるスタジオで、数分間にわたって3人の警察官に殴る蹴るの暴行を受け、さらにもう1人の警察官がスタジオ内に催涙弾を投げ込む様子が映っていた。発端は、ゼクレアがマスクを着用しているか否かをめぐる口論だったと報じられている。
この動画が拡散したことで、フランスでは警察官による人種差別の問題が改めて注目されている。またフランス政府が、市民が(警察の暴力行為を抑止・記録するために)携帯電話で警察官を撮影することを禁じる法案を提出したことで、特に移民が多く暮らす地域では不安の声が高まっている。
現在、議会で審議が続けられている問題の法案は、市民が悪意を持って警察官の(顔が認識できる)画像や動画を公開することを禁じる内容だ。11月28日にはフランス各地で法案に抗議するデモが展開され、パリでも大勢の人がデモ行進を行った。
動画は「身を守るもの」か「攻撃材料」か
反対派は、新たな法案は報道の自由を脅かし、市民が警察の暴力を通報しにくくするものだと主張している。ゼクレアもAP通信に対して、「動画のお陰で自分の身を守ることができて幸運だった」と語っている。ゼクレアに暴力を振るった警察官たち(監視カメラに気づいていなかったと報じられている)は、映像が公開された後に停職処分となった。また検察当局は11月29日、4人の警察官に対する本格捜査を請求し、裁判所は4人のうち3人を引き続き勾留することを認めたという。
フランス24によれば、パリのレミ・ハイツ検事総長は問題の警察官らについて、武器を用いた意図的な暴行や人種差別的な発言、虚偽公文書の作成などの容疑で捜査を行うと述べた。問題の警察官らは、警察の記録文書に「ゼクレアが攻撃してきて1人の警察官の銃を奪おうとした」と記述しているが、監視カメラ映像はそれが嘘であることを示している。
ゼクレアは報道陣に対して、次のように語った。「警察官は私を守ってくれるはずの人々だ。私は暴行を受けるようなことは何もしていない。彼らを法律で処罰して欲しい。(暴行を受けて)もちろん怖かった。自分の身を守ってくれる動画があって幸運だった。こんなことがあってはならない」