トランプが残したデマ地獄で「Qアノン」が共和党を乗っ取る日
QAnon Believers Have Lost Their Savior, But Their Power is Growing
「Qアノンがトランプと共にいなくなるとは思わない」と、ライト・ウィング・ウォッチ(市民の社会参加を促す団体「People For American Way」が展開する右派監視プロジェクト)の編集者アデル・M・スタンは本誌に語った。スタンは調査会社ユーガブによる最近の調査を引き合いに出し、「共和党支持者の半数は、小児性愛者の秘密結社があるというQアノンの陰謀論を信じ、これから誕生するのは、小児性愛者が大勢いる違法な政府だと信じている」と言う。「政府に対する信頼を回復するには、長い時間がかかるだろう」
Qアノンの陰謀論の根底にある信念もまた、生き延びるだろう。Qアノンがこの数カ月、ネット上や世界各地での集会で訴えているのが、「セーブ・ザ・チルドレン(子どもたちを救え)」という新たなスローガンだ。Qアノンの提唱する「サタン崇拝の人喰い小児性愛者たち」という過激な主張を知らない人々が、子どもを救おうというこの一見罪のないスローガンに引き寄せられる可能性はある。
そのうえQアノンは今や、怪しげな匿名掲示板上の存在から米議会に進出した。2人のQアノン支持者が連邦下院選で当選したのだ<関連記事参照>。
暴力やテロにも発展しかねない
スタンは、Qアノンの台頭とトランプがもたらした風潮は、将来の共和党の姿を形作ることになるかもしれないと言う。
「彼らは共和党内で力を築きつつある」と、スタンは言う。「1970年代後半から1980年代に宗教右派が使った手だ」
「共和党は常に、何かの勢力に支配されてきた。Qアノンもそういう存在になる」
Qアノンの陰謀論が政治の主流になっていけば、暴力やテロに発展するかもしれないとスタンは言う。
「Qアノンは、民主党とハリウッドの幹部すべてを殺せと呼び掛けている。彼らはみんな小児性愛者で子どもを密売している、というのがQアノンの主張だからだ。民主党とハリウッドの幹部というだけでみな、悪魔なのだ」
トランプは、デマがまかり通る地獄のような光景を生み出した。それに暴力的な集団が心酔し、アメリカは混沌のなかに残された、とスタンは言う。唯一の希望は、十分多くのアメリカ人が「いい加減にしろ」と立ち上がるまでバイデンがデマに抵抗してくれることだが。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら