最新記事

米大統領選

政権移行期にトランプがやりそうな「破壊活動」

Trump Has 70 Days to Undermine Joe Biden, Even If He Eventually Concedes

2020年11月9日(月)18時25分
スティーブ・フリース

トランプが統治の仕事から手を引いてまったく関与しようとしなくなるとか、腹いせから議会のあらゆる決定に拒否権を行使するといった可能性もある。12月11日以降の連邦政府の予算は決まっておらず、トランプの対応次第ではコロナ禍のまっただ中で政府閉鎖という恐ろしい事態もありうると、フェアフィールド大学のゲール・アルバーダ助教(政治学)は言う。

政権が変わってもすぐに取り消せないような決定を行う可能性もある。大統領令や人事、新たな規制の導入など可能性はさまざまで、バイデン陣営はトランプ側の動きを注視している。

「新たに政権に就く側は、政権を去る側が最後に何をするか目を光らせようとするものだ。だがルールもあって、(過去には)政権を去る大統領のやり過ぎを防いできた」と、前述のバイデン陣営の政権移行チーム関係者は言う。「トランプなら、ありとあらゆる大混乱の種を命じてもおかしくない」

移民政策の改善を求める人々の間でも懸念が高まっている。トランプは移民問題での強硬姿勢で支持を集めてきた人物であり、「できるだけたくさんの人を排除する」ために広汎な取り締まり強化を命じる可能性があるというのだ。

悪事の証拠が消される?

「いったん身柄を拘束されてしまうと、釈放させるのは非常に難しい。たとえ当局の側にきちんとした(拘束の)根拠がなかった場合でもだ。バイデン政権が発足してもその影響は一部で残るだろう」と、全米法律家ギルドで移民問題の責任者を務めるシリヌ・シェバヤは言う。

駆け込みで新たな規制や規制緩和が行われる可能性もある。内務省はすでに、アラスカの自然保護区での石油掘削や森林伐採を認める決定を下している。「1月までにトンガス国立森林公園での伐採に向けた動きが加速することは大いにあり得る。そうなればもう後戻りはできない」と、グリーンピースの専門家ティム・ドナビーは言う。

トランプ政権高官が「不祥事に関わる文書や証拠を損壊」する懸念もあると、オーンスティーンは言う。高官らのたちの悪さから言って、可能性はいくらもある。「理論的には書類の損壊を防ぐための法制度は確かに存在する。だがいったん損壊されてしまえばもう取り返しが付かない」

オーンスティーンは、バイデン陣営は強く警戒すべきだと指摘する。「危険をしっかり見すえてこの問題に取り組まなければ、職務怠慢のそしりを免れない」

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中