最愛のビアホールを閉鎖したドイツに、アメリカはコロナ対策を学ぶべき
飲食店を閉鎖せよ(フランクフルトのカフェ、10月29日) KAI PFAFFENBACH-REUTERS
<米ニューヨーク・タイムズ紙によれば、アメリカで学校閉鎖を理由に離職した母親は推定で160万人に上る>
ドイツの新型コロナウイルス対策は、欧米諸国の模範とされている。メルケル首相のリーダーシップの下、ドイツの迅速かつ組織的な初期対応は死者を少なく抑え、感染率をコントロール可能なレベルにまで急速に低下させた。
この成功は、アメリカの場当たり的でお粗末な対応とは対照的だ。連邦制の大きな民主主義国でも、パンデミック(世界的流行)にうまく対処できることを証明している。
ヨーロッパが感染拡大の第2波に見舞われた現在、ドイツの状況も深刻化している。新規感染者数は100万人当たり223人。フランス、イタリア、イギリスなどの近隣諸国やアメリカより低いが、かつてなく高い水準にある。
ドイツは10月28日、新たに1カ月間の部分的ロックダウン(都市封鎖)を発表した。バーやレストランなどの飲食店、劇場などの娯楽施設、マスクなしの客が屋内に密集するその他の施設を閉鎖し、損失の金銭的補償を行う。一方、小売店や学校は閉鎖しない。
バー、レストラン、クラブなど、リスクの高い施設を補償と引き換えに閉鎖させ、地域社会への広がりを抑えることで、学校の授業を安全に継続させる──つまり、ドイツは日常生活をある程度維持しつつ、パンデミック対策の常識とされてきた戦略を追求しているのだ。
特にバーやレストランは感染拡大の温床だ。ブラウン大学公衆衛生大学院のアシシュ・ジャー学部長が言うように、その閉鎖と補償は「基本中の基本」だろう。「屋内。マスクなし。無礼講。人々は1、2杯飲むと警戒心が薄れ、互いに近づき始める」と、ジャーはMSNBCに語った。
ドイツは学校を継続するために最愛の存在であるビアホールを閉鎖することにしたが、アメリカはほぼ真逆を行っている。
ニューヨークやワシントンのような慎重な都市でも、バーやレストランの屋内での接客を認めている。一方、学校は対面授業の再開がなかなか軌道に乗らず、頻繁に授業を中止したり遠隔学習に移行したりしている。
その結果、多くの生徒が極めて重要な時期に十分な教育を受けられず、親が仕事を犠牲にせざるを得なくなっている。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、学校閉鎖を理由に離職した母親は推定160万人に上る。
なぜこんな状況に陥ってしまったのか。オンラインメディアVOXのマシュー・イグレシアスが指摘するように、州政府や自治体は飲食店の営業継続を求める強い圧力にさらされてきた。経営者は金を稼ぎたい、労働者は仕事がしたい、政治家は税収が欲しいと思っているからだ。