最新記事

政権移行

国防総省を骨抜きにするトランプの危険な妨害工作

House Armed Services Chair Warns of 'Chaos' As Pentagon Officials Exit

2020年11月11日(水)18時05分
ジェフリー・マーティン

大統領選が終わるやツイート1つで解任されたエスパー国防長官(右) Jonathan Ernst-REUTERS

<国防総省では反トランプ派の幹部がわずか2日間で4人解任・辞任した。安全保障を犠牲にしても、バイデンの政権移行に徹底抗戦する構えか>

マーク・エスパー国防長官は9日、ドナルド・トランプのツイートで解任され、ジェームズ・アンダーソン国防副次官(政策担当)は10日にみずから辞任した。この事態を受けて、下院軍事委員会のアダム・スミス委員長は10日、トランプ政権は「混乱と分裂」の種をまき散らしていると述べた。

エスパーの解任とそれに続くアンダーソンの辞任から、今回の大統領選挙でジョー・バイデンに負けたことを断固として認めようとしないトランプ大統領が、自分への忠誠心を示した人々だけで周囲を固めようとしているのではないかと懸念する声は少なくない。

エスパーは今年6月、ジョージ・フロイド殺害事件をきっかけとした人種差別デモの鎮圧に連邦軍を動員しようとしたトランプの方針に公然と反対した。スミスは10日に声明を出し、国防総省の幹部が多数辞めている実態を明かし、このままだと国防総省は「骨抜き」になるかもしれないと述べた。

「ジョー・バイデン(前副大統領)が次期大統領になるやいなや、トランプとトランプ支持派は混乱と分裂の種を蒔き始めた。混乱は国防総省にも達したようだ」

「これが今後の流れの始まりだとすれば、トランプは安全保障の専門家を解任するかやめるように仕向けて、自分により忠実な人間と置き換えるだろう。そして、(大統領就任式までの)今後の70日間はよくて『不安定』、最悪の場合は『危険』な状態になる」と、スミスはつけ加えた。

周囲を忠臣で固めて

国防総省が10日に発表したところでは、ジョセフ・ケルナン国防次官(情報安全保障担当)とエスパーの首席補佐官を務めてきたジェン・スチュワートも10日に辞表を提出した。

アンダーソンの任務を引き継ぐアンソニー・タタは今年7月、もともと国防副次官(政策担当)に指名されていた人物だ。そのときはイスラムに対する嫌悪を示すツイートをしていたことが発覚し、指名が撤回された。

国防総省の動きは、バイデン陣営がホワイトハウスに移行するプロセスを開始しようとする試みを妨げようとするトランプの強い決意を示しているのかもしれない。

トランプ陣営は、郵便投票の取り扱いなどで不正投票があったとして一部の激戦州で訴訟を起こしている。民主党は勝利を自分から「盗もう」としていると主張しているが、こうした主張を裏付ける証拠はまだ出されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中