米中衝突が生むアジアの新たなパワーバランス
US-China Geopolitical Battle for Asia Shapes New Power Dynamic for Region
「中国は平和な時代には世界貿易に大きな影響を与え、紛争の時代には、世界的な海上物流における圧倒的な優位性を活用できる。それは主としてアメリカの輸入業者の犠牲の上に構築された」と、報告書は述べている。
アメリカが中国の海軍力にさらに重点を置いていることについて、本誌の取材に応じた国家安全保障会議(NSC)は、中国の軍事力に関する国防総省の最新の年次報告書について触れた。
この報告書は、アメリカと中国の軍事力の差は急速に縮まっていることを指摘している。とくに3つの重要なカテゴリー(陸上発射型の従来型弾道ミサイルと巡航ミサイル、統合された防空システム、そして海軍の規模)で、中国はすでにアメリカを上回っている。
中国の急速な軍事力の増強は、2050年までに「世界クラス」の軍隊にするという習のビジョンに沿ったものだ。
トランプ政権は、米海軍を大幅に拡大し、オーストラリア、インド、日本と共有する「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンの実施を支援する戦闘部隊2045計画を考案した。
この理念に対する各国共通の意気込みを示すために、11月に行われる海上合同軍事演習「マラバール」に初めて4カ国の海軍がそろって参加することになった。
成熟した準軍事同盟
ディーキン大学のチョンシン・パンは、このような行動はここ数年のクアッドの進化を示し、中国にとっては、それが明確なシグナルとなった、と述べた。
「クアッドは長年にわたって『成熟』し、海上にほぼ焦点を当てた中国に対する軍事準同盟として設計されたものであったことがはっきりしてきたといえるだろう」と、パンは本誌に語った。
「成熟というのは、閣僚レベルで話し合いが行われ、海上の軍事封じ込め(例えば、マラバール海軍演習)をより重視していること、そして意図的に中国を標的としていることをより明確にしている、といった点だ」と彼は言った。
しかし、ほとんどのパートナー国は、中国を標的としていることを認めていない。
「日・豪・印・米の枠組みは、「自由で開かれたインド太平洋:」の促進、質の高いインフラ、海上安全保障、テロ対策などの共通の課題に対処するための具体的な協力を促進するための幅広い議論を行うフォーラムだ」と、日本の外務省は本誌に文書で答えた。「したがって、それは特定の国に焦点を当ててはいない」
「様々な懸念事項」にもかかわらず、この文書では、日本と中国の関係を「日本にとって最も重要な二国間関係の一つ」と表現した。
したがって、この地域における中国の役割は、単に南シナ海のような競争地域に軍隊を派遣し作戦行動を展開することだけではない、とパンは語った。最終的には、オーストラリア、インド、日本をはじめ各国は、中国との関係を個別に交渉しなければならない。