最新記事

スウェーデン

新型コロナ、スウェーデンは高齢者を犠牲にしたのか

Sweden's COVID Strategist Wants to Ease Restrictions for Elderly

2020年10月21日(水)18時25分
スー・キム

ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)の20日の報告によると、スウェーデンは現在、ヨーロッパで7番目に死亡率が高く、10万人当たりの死者数は58.12人に達している。

スウェーデンで高齢者の死者数が多いことについて、テグネルは、「こんなに死亡率が高くなければよかったのにと誰もが残念に思っている。まったく予想できなかったことだと言っておきたい」と語った

「われわれは積極的に、わかっていてこのリスクを取ったわけではない。スウエーデンでは高齢者を犠牲にしたようなものだ、という批判があることは知っているが、そんなことはまったくない、と断言する」

ロイター通信によると、スウェーデンの新型コロナによる死者のうち約2600人が高齢者介護施設の入居者だった。

今年7月に発表された研究によると「スウェーデンの新型コロナ死者数の70%以上は、高齢者ケア施設に滞在中の人々だった(2020年5月中旬現在)」という。

さらに、「新型コロナの犠牲者は、ほとんどが高齢者である。スウェーデンでは、2020年5月16日時点の死亡者の割合は70代で22%、80代が41%、90代が25%で、70歳以上が88%を占めている」としている。

高リスクだった施設入居者

だが、研究を共同執筆したレシオ研究所(ストックホルム)のダニエル・クライン研究員はそうした見方を否定する。「スウェーデンにおける医療と高齢者ケアの状況は、2020年3月までの2年間についてはAまたはA +の評価を与えてもおかしくない、すばらしいものだった。スウェーデンの制度は超高齢者と病人の死亡率を抑制していた」と本誌に語った。

「2020年3月に新型コロナウイルスが老人ホームやその他の高齢者介護サービス施設を襲ったとき、悲しいことにたくさんの高齢者がウイルスに屈した。だがその前の2年間、スウェーデンでは優れた医療と高齢者ケア制度のおかげで、多くの高齢者が死を免れ、命を長らえていた。そのため、新型コロナの感染拡大時には、施設に死亡リスクが高い人々がたくさんいた。この事実を無視するのは無責任だ」と、バージニア州にあるジョージ・メイソン大学の経済学教授でもあるクラインは言う

高齢者ケアが良すぎたために犠牲も増えたのだとすれば、皮肉だ。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ロシア産LNG積み替え禁止など協議 新たな制

ビジネス

韓国外貨準備、4月は19カ月ぶり大幅減少 介入で

ビジネス

テスラがソフトウエアやサービスなどの部門でレイオフ

ワールド

ヨルダン国王、イスラエルのラファ侵攻回避訴え 米大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中