トランプは肺を病んでいる──8秒間の「息切れ」動画が語る多くのこと
Doctors Say Trump Was Not Breathing Normally.
回復ぶりをアピールしようとしたが、苦しげな様子が目につく結果に(10月5日、ホワイトハウス) Erin Scott -REUTERS
<退院直後の動画を見た専門家は「肺の機能に問題あり」と断言>
新型コロナウイルスに勝ったとばかり、「勝利宣言」をしながら、苦しげに肩で息をするドナルド・トランプ米大統領。ネット上で話題になった動画を見た複数の専門家が、どう見ても肺が正常に機能しているとは思えないと、本誌に語った。
トランプは10月1日に受けた新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と分かり(当初は公表せず)、翌2日に首都ワシントン郊外のウォルター・リード国立軍医療センターに入院した。そして週明けの5日には早くも退院してホワイトハウスに戻ると、バルコニーに立ってマスクを外し、親指を立てる得意のゼスチャーをして、凱旋将軍よろしく敬礼をして見せた。
退院前のツイートでも「とても気分がいい」、「20年前より元気だ!」と回復ぶりをアピールしたが、健康不安は否めない。
5日に行われた記者会見で、トランプの主治医ショーン・コンリーは歯切れの悪い口ぶりだった。トランプは「まだ完全に危機を脱していないかもしれない」が、容体は「改善し続けている」というのだ。
この日に本誌が複数の専門家に確認したところ、最初に症状が出てから7〜10日の状態が回復に向けた重要な目安になるという。その頃に一気に容体が悪化することがあるためだ。
息苦しさは明らか
記者会見でコンリーは、大統領の体温が平熱に戻ってから72時間以上経過しており、血中酸素濃度も呼吸も正常だと主張した。
だがソーシャルメディアでは、退院は無謀だとのコメントが飛び交った。連邦下院議員のテッド・リウも見るからに苦しげなトランプの動画をツイッターに投稿した。「トランプはツイッターでウイルスの猛威を軽く見せようとしたが、この8秒間の動画で、その努力が吹き飛んだ。この動画では、彼は息を切らしてあえいでいる。このウイルスがどれほど呼吸を困難にし、肺にダメージをもたらすか、これを見て多くのアメリカ人が痛感したはずだ」
If a picture is worth a thousand words, what about a video? This 8 second video destroys all attempts by @realDonaldTrump to downplay the virus because it shows him gasping for air.
— Ted Lieu (@tedlieu) October 6, 2020
Many Americans are now visually seeing how the virus causes breathing difficulties & lung damage. https://t.co/6SuysTBCsZ
心血管と肺の疾患を専門とするニューヨークの臨床医ノア・グリーンスパンはこの動画について、「これは、私が考える正常な、全く(無理のない)呼吸とは明らかに違う」と、本誌にメールでコメントした。
グリーンスパンによれば、トランプは8秒間に3回呼吸しており、1分間では22.5回することになる。正常な呼吸は1分間に12〜20回とされる。
「本人が隠したくても、もろに出てしまった重要な兆候は、明らかに呼吸補助筋を使っていることだ」と、グリースパンは指摘する。それによれば、健康な人が呼吸補助筋を使うのは激しい運動をしたときだけで、通常は主に横隔膜の収縮で肺に空気を吸い込む。トランプのように、ただ立っているだけで、肩が激しく上下動するようなことはない。