最新記事

中国

「習近平vs.李克強の権力闘争」という夢物語_その2

2020年9月1日(火)18時31分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

おそらくフランスの国際放送RFI(Radio France Internationale)中文版の8月22日の報道に「中国の三大政府系メディアが李克強の重慶災害視察を報道せず」という記事があるのを見つけて、事実確認もせずに記事の内容を妄信して、そのまま和訳し転載したものと思う。

このRFIの記事には「18日に習近平が安徽省に行ったことに関しては大々的に報道しているのに、李克強に関しては人民日報、中央テレビ局(CCTV)および新華社という中国の三大メディアは一文字たりとも報道していない。ただ国務院管轄下の中国政府網が小さく報道しているのみだ」と書いている。

RFIにそう書いてあったと正直に書くのなら、まだ良心的だが、あたかも自分が調べた結果「確固たる証拠を入手した!」とばかりに、「これぞ権力闘争の証左!」として嬉しそうに書いている。おまけに習近平と李克強の視察目的が異なることにも、どうやら気が付いていないようだ。

しかし、ファクトがどうなっているかを調べれば一瞬で、RFIの報道が間違っていることが分かったはずだ。

それなら事実はどうなっているかというと、習近平の安徽省視察(8月18日~21日)に関しては8月22日の「人民日報」が報道しており、李克強の重慶視察(8月20日~23日)に関しては8月24日の「人民日報」が報道している。

習近平の視察は「視察が終わった翌日」に発表しており、李克強の視察も「視察が終わった翌日」に発表しているので、同じタイミングだと言える。

むしろ李克強の重慶視察に関しては、まだ視察中なのに、8月22日に「中華人民共和国・中央人民政府」の「中国政府網」が報道しただけでなく、「李克強の重慶考察」を特集するウェブサイトまである。

また8月23日には新華網までが報道しており、李克強に関しては逆に実に華々しい報道をしているというのが実態だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中