最新記事

中国

「習近平vs.李克強の権力闘争」という夢物語_その2

2020年9月1日(火)18時31分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

中国建国以来、胡錦涛時代ほど「国家主席と国務院総理」が仲良かった時代はなかった。それでも胡錦涛が主催した座談会に温家宝が出席しないで、他の中共中央政治局常務委員が出席している例はいくらでもある。逆に温家宝が主催して胡錦涛が出席していないで、他の中共中央政治局常務委員が出席した座談会の例もいくらでもある。

全てが党員幹部という会議でない限り、企業家や専門家あるいは教育者など、「党外人士」による専門別の「参考意見」を聞くための座談会は、中共中央政治局常務委員会委員全員が出るということは基本的にないのが、中国建国以来の習わしだ。

それを信じることができない人は、江沢民時代の事例を見てみるといい。

たとえば2001年4月29日に江沢民国家主席が主催した「全国労働模範座談会」には国務院総理(首相)である朱鎔基は出席していない。しかし他の中共中央政治局常務委員会委員は一部出席している。これもまた7月21日に習近平が主催した企業家座談会と同じだ。

これは中国政治の基本中の基本で、毛沢東時代においても「党外人士」と座談会を何度も開催しているが、中共中央政治局常務委員が全員出席するなどという例はほとんどない。

これが中国政治の真相だ。

権力闘争論者たちは、もう少し一歩引いて勉強した方がいいのではないだろうか。

4.今年8月の李克強による重慶の水害視察に関して

8月20日から23日にかけて、李克強は重慶における水害の視察に出かけた。

一方、習近平は8月18日から20日にかけて安徽省の視察に出かけた。視察目的は安徽省の改革開放をさらに発展させようというもので、防災活動に従事している者やその犠牲者の家族などを慰問している。

さて、この報道に関して権力闘争論者たちは、以下のように分析している。

――8月20日から23日まで、李克強の重慶視察に関して「人民日報、CCTV、新華社」という三大報道で一切報道しなかった。せいぜい国務院直属の「中国政府網」で報道させたに過ぎない。おまけに李克強は長靴を履いて泥にまみれているのに、習近平は災害が終わった後にのんびりと視察したという風情だ。これこそは「習近平vs.李克強の権力闘争」の決定的な証拠だ!

概ねこのような内容で分析し、大喜びなのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:米経済にスタグフレーションの兆候、70年

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 7
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中