ルース・ギンズバーグ判事の死、米社会の「右旋回」に現実味
鍵となるロバーツ長官
2018年に保守派のアンソニー・ケネディ判事が引退した後の2年間、連邦最高裁の動向を左右する立場となったのがジョン・ロバーツ最高裁長官だった。だが、ギンズバーグ氏の後任をトランプ大統領が指名することになれば、同長官の影響力ある立場も弱まる可能性がある。
9人の判事で構成される連邦最高裁において、イデオロギー的に中間の位置を占めるロバーツ長官は、自分より左のリベラル派4人、右の保守派4人のどちらに付くかによって、多数派意見を決定する権利を握っていた。
ロバーツ長官は制度としての連邦最高裁を守り、司法権の独立を擁護する人物として知られており、重要な事件においてギンズバーグ氏のほか3人のリベラル派に賛同している。
6月には、人工妊娠中絶を厳しく制約するルイジアナ州法を無効とする側に立ち、子どもの頃に米国に入国した数十万人の不法移民、いわゆる「ドリーマーズ」の保護を廃止しようとするトランプ氏の動きを阻止した。
ロバーツ長官は、状況によっては重要な事件で妥協点を探り、彼よりも保守派の判事らを困惑させることもある。
たとえば連邦最高裁は今年7月、ニューヨーク州検察によるトランプ氏の財務記録の提出請求を認めると判示する一方で、民主党優位の下院委員会が直ちに同様の資料を入手することを阻止した。ロバーツ長官はいずれの判決も支持している。
だが、ギンズバーグ氏が死去した今、ロバーツ長官が自分1人で均衡した勢力を左右することはできなくなった。
官僚機構との戦い
保守派と企業関係者は、長年にわたり、連邦政府諸機関の権限の抑制を求めてきたが、連邦最高裁も自発的にこの動きに協力するようになっている。
いわゆる「行政国家との戦い」は、保守派の最高裁判事が6人に増えることによって拡大する可能性がある。最も注目すべきは、連邦法の適用範囲の解釈に際し、裁判所は連邦政府官僚に従うべきであるという1984年の画期的な判例が危うくなりかねないという点だ。
仮にこの判例が覆されるようになれば、今後の民主党政権が、環境保護や消費者保護といった分野の規制を定めようとしても、保守派に支配された連邦最高裁が、その規制を制約することができる権限を与えられる可能性が生じる。
Lawrence Hurley(翻訳:エァクレーレン)
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