課題山積の中で始動する菅政権 正当性確保へ人事・解散がカギに
現在与党の一角を占める公明党も「解散・総選挙で1カ月半ないし2カ月の政治空白を作ることを国民は今、望んでいない」(山口那津男代表)として年内解散に慎重だ。「秋に解散すれば支持率急落の可能性もある」(公明党関係者)との指摘もある。
市場関係者からは、「解散ができる条件として、感染の収束と経済の持ち直しが必要」(SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト・丸山義正氏)との声は多い。まさしく菅氏が唱えてきたように「感染防止対策を講じながら、段階的に経済社会活動を再開させていく」ことが必要となる。
ただ実行は難しい。「コロナが収束しないと経済回復は難しく、経済回復とコロナ対策の難しいバランスが必要。10月などの選挙は、難しいのではないか」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト)と指摘がある。
今月のロイター企業調査でも、当面コロナの事業への影響が「終息するメドが立たない」との回答が5割以上を占め、5月から減っていない。
カギを握るワクチン開発は、治験の一時中断を余儀なくされるものもあり、確約されもたのではない。菅氏が幾度も「来年の前半までに全国民に提供できる数量を確保する」と強調しているが、それがコロナ禍の終息に結び付く保証はない。
米中対立激化、日本に対中強硬姿勢要求も
菅政権として直面するのは内政だけではない。米中対立の激化は日本にも確実に影響しつつある。
11月の米大統領選は「トランプ氏、バイデン氏いずれが勝つかまだ見極められない」(自民中堅)なかで、いずれの候補が勝利しようとも、米国の対中強硬姿勢に巻き込まれていくことは確実だ。
すでに「米国政府は対中経済安全保障で日本に期待している」(外務省関係者)ことから、習近平国家主席の国賓来日の扱いなどを含め、中国との付き合い方は難しい局面を迎えそうだ。
安倍政権下では、「後半は『一帯一路』を承認するなど親中姿勢が明確になり、首相補佐官の今井尚哉氏や二階俊博・自民党幹事長などが親中派として存在してきたと米側では分析している」(元外交官の美根慶樹氏)との見方もある。
このため、菅政権の官邸内や党人事の行方も、対中戦略への影響が小さくないとみられる。コロナ感染の拡大を防ぎつつ、経済再生に向けてどういう具体策をとっていくか。そのためにどういう布陣で臨むかは、解散戦略とも絡み、新政権が本格政権となるかを左右することになりそうだ。
(竹本能文、中川泉 編集:石田仁志)
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