最新記事

アメリカ政治

トランプ、意図的にコロナのリスク軽視 著名ジャーナリストが内幕本で指摘、大統領選にも影響か

2020年9月10日(木)10時06分

トランプ米大統領が新型コロナウイルスの致死性や伝染性を今年2月時点で認識していたにもかかわらず、混乱を回避するために国民に正しい情報を伝えていなかったことが、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が新著「Rage(怒り)」のために行ったインタビューで明らかになった(2020年 ロイター/JONATHAN ERNST)

トランプ米大統領が新型コロナウイルスの致死性や感染力を今年2月時点で認識していたにもかかわらず、混乱を回避するために国民に正しい情報を伝えていなかったことが、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が新著「Rage(怒り)」のために行ったインタビューで明らかになった。

CNNが入手したインタビューの録音によると、トランプ氏は国家非常事態を宣言した数日後に当たる3月19日に行われたウッドワード氏とのインタビューで、新型コロナについて「私は常に事態が深刻でないように思わせたかった。今でもそうする方が良いと思っている。パニックを引き起こしたくないからだ」と発言。新型コロナが高齢者だけではなく、多くの若年層にも感染するという「驚愕の事実」が見つかったとも述べた。

CNNやワシントン・ポストによると、トランプ氏は2月7日に行われたインタビューで「新型コロナは空気感染する」と言及。「非常に用心しなければならず、かなり細心の注意を要する。活発なインフルエンザよりも致死性は高い」と語っていた。


このインタビューの1週間後、トランプ氏はホワイトハウスの記者会見で、米国の感染者数は「数日以内にゼロ近くまで減少する」と述べていた。

トランプ氏は9日、ホワイトハウスで「私はこの国のチアリーダーだ。国を愛しており、国民を怖がらせたくない」と述べ、「いかなる基準で見てもわれわれはうまく対応した」と強調した。

11月の米大統領選の民主党候補、バイデン前副大統領は同日、ミシガン州での講演で、トランプ大統領が新型コロナの致死性について故意にうそをついたことは「職務怠慢」であり、国民に対する裏切りだと非難した。

ホワイトハウスは、トランプ大統領が新型コロナについて意図的に米国民を欺いたとの指摘を否定。マクナニー大統領報道官は記者会見で「大統領がウイルスを軽視することは絶対にない。大統領は早期に対応策を講じていた」と強調した。

一部の共和党議員もトランプ大統領のコロナ対応を擁護し、リンゼー・グラム上院議員は「経済活動を停止したトランプ氏の行動は正しかった。当時の(トランプ氏の発言の)トーンは対応の正しさを物語っている」と述べた。

ウッドワード氏は9月15日に発売される新著の執筆に当たり、トランプ氏へのインタビューを18回実施したという。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中