最新記事

領土紛争

中印紛争再燃:中国「多大な損害負わせる」とインドに警告

China Media Warns India of 'Severe Losses' As Border Dispute Reignites

2020年9月2日(水)18時15分
デービッド・ブレナン

インドとの国境地帯で戦闘訓練を行う人民解放軍 CHINESE PEOPLE'S LIBERATION ARMY TIBET MILITARY COMMAND

<週末、6月の衝突以来の緊張が再燃。相手領土を占領して要塞まで作っているように見える中国に、インド国民はどこまで耐えられるのか>

中国国営メディアは、人民解放軍が「深刻な損害」をインド軍部隊に与え得ると警告した。これは、中印両国間の国境紛争が8月29日からの週末にかけて再燃したことを受けたものだ。両国とも相手国が、実効支配線を越えて不法侵入したと非難している。

中国軍の西部戦区は8月31日、ヒマラヤ山脈地帯にあるパンゴン湖の湖岸で、インド軍の部隊が実効支配線を不法に越えたと主張した。この地域では6月にも両国軍が衝突し、石やこん棒を使った接近戦によって数十人の死者が出た。

これに対しインド軍は31日、追加の部隊を派遣したのは、「現状を一方的に変更しようとする(中国側の)意図」を「未然に阻止」するためだったと述べた。インド軍は、自軍がこのような行動に至った理由は、29日夜から30日朝にかけて中国軍の部隊が国境地帯で「挑発的な軍事行動」を行ったためだと主張した。

中国共産党の機関誌、人民日報系列の英字紙「環球時報」は9月1日、「中国の領土主権を著しく侵害し、中印国境地帯の平和と安定を損ねる、あからさまに挑発的な行動」を非難する論説記事を掲載した。

衛星画像を見る限り、実効支配線を越えて陣地を確保しているのは中国軍のようだ。中国軍はインドが自国の領土とする地域を占拠し、新たに支配下に置いた陣地を守るための要塞を建設しているように見える。

「生温いモディ」にインドで怒りの声

インドメディアの報道によると、中国軍の部隊は、インド領のうち約1000平方キロの地域を占拠しているようだ。野党のインド国民会議は1日、こうツイートした。「ナレンドラ・モディ首相が中国の侵攻を非難し、具体的な手を打つまで、インドはさらにどれだけ耐えなければならないのか?」

一方環球時報は、「インドが対峙しているのは強大な中国である点は指摘しておかなければならない」と書いている。「PLA(人民解放軍)は、この国の領土を隅から隅まで守り抜くのに十分な兵力を擁している」

「もしインドが勝負を挑みたいというなら、中国にはインドを上回る手段と能力がある。インドが軍事的対決を望むのであれば、PLAがインド軍に対し、1962年の時よりもはるかに深刻な損害を与えるのは確実だ」

一方、トランプ政権とアメリカ議会は、インド支持の姿勢を表明。中印国境での対立を、中国のより広範な地政学的野心を示すものと位置づけている。中国政府とその傘下の国営メディアは、アメリカが、自らの戦略的ライバルである中国の影響力拡大を阻むために、インドを自らの道具として使っていると主張している。

(翻訳:ガリレオ)

<参考記事>中国とインドが国境めぐって小競り合い、対立再燃に3つの要因
<参考記事>中国、インドとの武力衝突現場付近に新たな構造物 衛星写真が示唆

【話題の記事】
・中国・三峡ダムに過去最大の水量流入、いまダムはどうなっている?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・戦略性を失った習近平「四面楚歌」外交の末路
・世界が激怒する中国「犬肉祭り」の残酷さ

20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中