最新記事

アメリカ経済

長引くNYオフィス不況 コロナショックは不動産投資も直撃

2020年9月15日(火)11時08分

コリアーズによると、8月の賃貸案件は昨年の月間平均358万平方フィートに比べ、約64%減った。

INGの商業不動産部門責任者、クレイグ・ベンダー氏は「テナントの多くが短期賃貸契約の延長を求め、長期契約にしりごみしているのはまったく驚きではない」と語った。「新型コロナ沈静化の道筋がはっきりしてくるまで、今の状態は変わらないだろう」

テレワークは主役にはならない

不況はニューヨークのオフィス市場だけの話ではない。これは米東海岸と西海岸のオフィスビルに投資する不動産投資信託(REIT)の価格でも見て取ることができる。

米株式市場は3月に売り込まれた水準から55%余りも急上昇しているが、オフィスREITの価格は基本的に横ばいのままだ。新型コロナが米景気後退を誘発するとの懸念から投資家が幅広い株式を投げ売りした2月半ばに比べると、東海岸と西海岸の主要都市に投資するオフィスREITの時価総額は約半値だ。

センタースクエア・インベストメント・マネジメントのスコット・クロー最高投資責任者によると、企業が自社のオフィススペースに想定する価値は以前よりも下がっている。

ただ、コリア-ズのコーエン氏は他の商業不動産関係の経営者と同様、テレワークが今後も優勢になることには懐疑的だ。人々は社内での出世を考えるときは、上司のそばにいたがるだろうという理由だ。「テレワークが永劫に続くとの考え方には賛成しない。社内であれ社外であれ、競争原理がわれわれをオフィスに引き戻すだろうからだ」という。

もっともセンタースクエアのクロー氏は、オフィス部門が流動的であり、REIT市場の価格動向が「まるでさびれたショッピングモールの予備軍」のようだと認める。「たぶんニューヨークは今、米不動産市場で最もひどいうちの一つだ」と話した。

(Herbert Lash記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2

ワールド

トランプ氏、ハーバード大の免税資格剥奪を再表明 民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中