最新記事

フェイクニュース

ロシア、独立メディア装い米英にフェイクニュース流し選挙工作か Facebookがアカウント停止

2020年9月2日(水)08時41分

米フェイスブックは1日、ロシアが独立メディアを装って米国と英国の左寄りの有権者に影響を及ぼそうとしていたと明らかにした。1月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

米フェイスブックは1日、ロシアが独立メディアを装って米国と英国の左寄りの有権者に影響を及ぼそうとしていたと明らかにした。

フェイスブックによると、「ピース・データ(Peace Data)」という報道機関を模倣する団体が、フリーランスのジャーナリストを起用し国内政治に関する記事を執筆させるなどして、11月3日の米大統領選挙に向け米国の政治や人種問題を巡る緊張の高まりをターゲットにしていた。

ピース・データはフェイスブックで13のアカウントを保有し、2つのページを運営。フェイスブックは偽の情報を利用したなどの理由で8月31日に停止した。

フェイスブックによると、調査でロシアのソーシャルメディア上の情報工作の拠点とされる「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」の過去の活動に関連していた複数の人物との関連が確認された。

IRAはロシアのサンクトペテルブルクに本拠を置く企業で、米国の情報機関はトランプ大統領が勝利した2016年米大統領選への介入で中心的な役割を果たしたとしている。

ツイッターも、「ロシア政府が背後にいると考えられる」工作との関連が疑われる5つのアカウントを停止したと明らかにした。

ソーシャルメディア分析会社のグラフィカの報告書によると、ピース・データは米国と英国の進歩主義団体や左派団体などを主要なターゲットとし、ウェブサイトで右派、および中道左派を批判するメッセージを発信していた。米国では特に「人種問題と政治的な緊張の高まり」にターゲットを据え、全国的に拡大した抗議活動のほか、11月の大統領選で戦う共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領に対する批判を注視していたという。

ロイターの電子メールによる取材に対し、ピース・データは返信していない。ロシア当局者からもこの件に関するコメントは得られていない。

大統領選に向けたトランプ大統領の陣営の広報担当者は、トランプ氏は「公正に」再選されるとし、「外国の介入は必要なく、望んでもいない」と述べた。バイデン氏の陣営からコメントは得られていない。米国家情報長官室は連邦捜査局(FBI)に問い合わせるよう求めたが、FBIからコメントは得られていない。

フェイスブックのサイバーセキュリティー対策責任者ナサニエル・グレイチャー氏は、FBIから寄せられた情報に基づき、大勢のフォロワーを獲得する前に疑わしいアカウントを停止したと表明。ロイターの取材に対し「ロシア勢は今もなお暗躍していると人々に知ってもらいたい」と述べた。

ピース・データは英語とアラビア語で情報を発信。ウェブサイトでは「主要な世界的なイベントを巡る真実」を報じる非営利の報道機関としている。ただグラフィカによると、サイトに掲載されている常任スタッフは実在の人物ではなく、掲載されている写真もコンピューターで合成されたものだった。

ロイターが確認した広告のスクリーンショットによると、ピース・データはこうした実在しない人物を通して、フリージャーナリスト向けのサイトのほか、ツイッターで記事1本当たり最高75ドルの報酬を提供していた。

ピース・データのウェブサイトには22人の寄稿者が掲載されており、この大部分が米国と英国のフリージャーナリスト。フェイスブックとグラフィカは、こうしたフリージャーナリストがピース・データの実態を知っているかどうかは分からないとしている。

グラフィカの調査部門責任者、ベン・ニモ氏は、実在する人物を装うことで、政治的な影響を及ぼそうとする工作の発覚を回避しようとしていると指摘。「工作活動の規模は格段に小さくなっている。発覚を難しくしようとしているもようだ」と述べた。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず

・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200908issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年9月8日号(9月1日発売)は「イアン・ブレマーが説く アフターコロナの世界」特集。主導国なき「Gゼロ」の世界を予見した国際政治学者が読み解く、米中・経済・テクノロジー・日本の行方。PLUS 安倍晋三の遺産――世界は長期政権をこう評価する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、6会合連続利下げ 預金金利2.25%に

ワールド

米ミサイル防衛「ゴールデン・ドーム」、スペースXが

ビジネス

エクイノール、NY州沖風力発電施設の建設中止 米政

ワールド

中国主席がカンボジア入り、歴訪最後も「保護主義」反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 7
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中