人口減少の時代に増え続ける新築物件 全国378万の空き部屋をどう有効活用するか
しかし、借り手となる人間の数が減っているので賃貸経営も楽ではない。2018年の『住宅土地統計』によると、共同住宅の借家数(居住世帯あり)は1664万、賃貸用共同住宅の空き家数は378万となっている。両者の合算に占める後者の割合(空き部屋率)は18.5%となる。今では、賃貸アパート・マンションの部屋の約2割が空き部屋ということだ。
なお地域差もある。<表2>は、同じやり方で計算した、47都道府県の賃貸共同住宅の空き部屋率を高い順に並べたものだ。
5%刻みで色分けしたが、25の県で20%、8の県で25%を超えている。上位の栃木や山梨では、賃貸部屋の3分の1近くが埋まっていない。市区町村レベルで見たら、4割、5割という数値も出てくるだろう。
東京のような大都市はまだマシだが、地方での賃貸経営は厳しいようだ。だが、さら地は地方に多く、地主は業者にそそのかされ、税金対策でアパートを建てようという考えに傾いてしまう。三重県の田園地帯にレオパレスのアパートが立ち並ぶ「レオパレス銀座」をテレビが取り上げていたが、全国各地でこうした珍光景が見られるようになる。
需要もないのにアパートを建てるのは、①自然破壊、②景観悪化、③犯罪の温床化、という弊害をもたらす。こういう行動に地主を掻き立てるなら、さら地から高い税金を取るなど止めたほうがいい。ないしは税金免除の対象を、子どもの遊び場や保育所建設など、社会性のある土地供与に限ればいい。
上述のように、既に378万もの賃貸アパート・マンションの空き部屋がある。横浜市の人口と同じくらいだ。その一方で、住居に困っている人は数多くいる。コロナの影響で失職し、家賃を払えず「住」を失った人もいる。行政が家賃を補助する形で、使われないでいる378万もの空き部屋(住資源)を活用すべきだろう。
これから先は人口減少が続く。こういう時代にあって、住宅の乱築などはしない方がいい。なすべきは、既存のハコの活用だ。上手くデータベース化し、供給と需要をリンクさせれば、「住」に困る人は大幅に減るだろう。前に本欄でも書いたが、空き家が増えすぎて「タダでいいから、ハウスキーパーとして住んでくれ」と頼まれる時代が来る(「家はタダで借りる時代-0円借家は実際にある」2019年6月5日掲載)。こういう楽観を持てるようになるはずだ。
<資料:総務省『住宅土地統計』(時系列統計表)>
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