最新記事

コロナストレス 長期化への処方箋

コロナ不安がもたらす眠れない夜の克服法

CORONAVIRUS ANXIETY INSOMNIA

2020年8月28日(金)16時45分
レベッカ・オニオン

一度目覚めると、あれこれ考え始めて眠れないまま夜明けを迎えることに CAVAN IMAGES/GETTY IMAGES

<命と睡眠が脅かされ1日のリズムは崩壊、不眠の改善は日常の工夫がカギに。本誌2020年8月25日号「コロナストレス 長期化への処方箋」特集より>

20200825issue_cover200.jpg

新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてから、睡眠導入剤の助けなしにぐっすり眠れたのはたった3晩だけだ。とはいえ寝付くのは早い。神経が疲れ切っているからだ。今はご多分に漏れず、私も1日15時間ネットでニュースをチェックし、せっせとメールを送り、オンライン会議をし、くよくよ考え込んでいる。

だからいったん寝付いても夜中にパッと目が覚める。そして、ありとあらゆる心配事に襲われる。

もう一度眠ろうと寝返りを打つが、頭が冴え、興奮は高まるばかり。レイオフの嵐が吹き荒れていること、フードバンクの前に食料支援を求める人たちが列を成していること。高齢の親に会えないこと......。

夜中にベッドの上で悶々としているのは、私だけではないだろう。「平常時でも、睡眠に関する悩みで最も多いのは不眠だ」と、睡眠専門の神経科医ブランドン・ピーターズは言う。「当然、ストレスが多い時期には悪化する」

津波や地震、ハリケーンなどの自然災害の被災者がしばしば睡眠障害を訴えることはこれまでの研究で分かっている。だが新型コロナのパンデミック(世界的大流行)はこうした災害とは全く異質だ。

ニューヨーク大学医学大学院の心理学者ジュディット・ブランは、2010年のハイチ地震の被災者を対象に不眠症の事例を研究してきた。「地震は非常に激しい災害だが、続くのは30秒程度。新型コロナは全く違う」と、彼女は言う。「ウイルスについては事前に情報があり、自分の住む地域に広がることも予想でき、心の準備もできる。ただ、パンデミックは人々の自由を奪う。命と生活が脅かされる不安を抱えながら、それに対して何もできない。そんな無力感が人々を打ちのめす」

「ノー・コロナ」時間を持とう

医師は通常、不眠に悩む人に生活習慣や生活環境を見直すようアドバイスする。だが困ったことにコロナ禍は全ての人に漏れなく「新しい生活様式」を強いる。毎朝決まった時間に起きて出勤する必要がなくなったこともその1つ。「けじめがなくなり、多くの人がだらだら寝坊するようになった」と、ピーターズは手厳しい。それでは夜中に目が覚めて、寝付けなくなるのも無理はない。

もしかしたら私たちが抱えているのは贅沢な悩みかもしれない。避難所で暮らす地震などの被災者と違って、コロナ禍では少なくとも自宅のベッドで眠れる。その気になれば起床・就寝時間も自分で管理できる。

【関連記事】ズーム疲れ、なぜ? 脳に負荷、面接やセミナーにも悪影響
【関連記事】頭が痛いコロナ休校、でも親は「先生役」をしなくていい

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中