最新記事

中欧

ロシアがベラルーシに軍事介入するこれだけの理由

Russia May Use Belarus Unrest, Officials Say

2020年8月20日(木)19時01分
トム・オコナー、ナビード・ジャマリ

しかしベラルーシについては、ラブロフ外相は「ベラルーシの人々は今の状況を彼ら自身の知恵で打開できると確信して」いると述べ、今のところ介入の可能性を否定している。

プーチンも表向きは同様の姿勢を見せている。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシア国営タス通信の記者に直接的な支援に乗り出す可能性はあるかと聞かれて、「そんな必要ない」と断言した。「仮にもそうした考えが入り込む余地はないし、全くもって論外だ」

だがNATOとその最新鋭の軍備が過去20年間、旧東欧圏にじわじわと入り込んできた状況を考えると、最後のとりでであるベラルーシが欧米勢に取り込まれるのを、プーチンが許すはずがないと、一部のウォッチャーは言う。国防総省情報局(DIA)の副長官を務めたダグラス・ワイズは本誌に「ルカシェンコを取り巻くベラルーシの状況は、プーチンにとって、あらゆる意味で悪夢であり、一刻の猶予もならない危機にほかならない」と語った。

国境の向こうで大規模なデモが起きている状況を、プーチンが手をこまねいて見ているはずはない。「ルカシェンコの『支援要請』を口実に、ロシアの常套手段であるハイブリッド戦争を仕掛けるだろう」と、ワイズは言う。「反政権派を標的にしたサイバー攻撃、軍の情報機関であるGRUの工作員の投入、そしてクリミア半島の重要拠点を占拠したリトル・グリーン・メン、つまりロシア軍への帰属を隠すため、記章を付けていない特殊部隊の兵士を投入するなど、成果を実証済みの戦術を総動員する戦争だ」

ロシアにとってのベラルーシの重要性を考えれば、プーチンは既に布石を打っているはずだと、ワイズはみる。「今の段階ではぎりぎりの線で軍事介入を避けつつ、着々と準備を進めて、最終的には一気に軍隊を投入する」そんな魂胆が透けてみえる、というのだ。

【話題の記事】
コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
米大学再開をぶち壊す学生たち、乱痴気騒ぎでクラスターも発生
ロシアが北朝鮮の核を恐れない理由
ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死

20200825issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年8月25日号(8月18日発売)は「コロナストレス 長期化への処方箋」特集。仕事・育児・学習・睡眠......。コロナ禍の長期化で拡大するメンタルヘルス危機。世界と日本の処方箋は? 日本独自のコロナ鬱も取り上げる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税で実効税率17%に、製造業「広範に混乱

ワールド

「影の船団」に偽造保険証書発行、ノルウェー金融当局

ワールド

焦点:対日「相互関税」24%、EU超えに政府困惑 

ワールド

OPECプラス8カ国、カザフの超過生産巡り協議へ 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中