イージス・アショア導入中止は、日米同盟を再考する絶好のチャンス
Japan Quits Aegis Ashore
日米は新たな協力関係を話し合う時期(ルーマニアのイージス・アショア) ADEL AL-HADDAD-INQUAM PHOTOS-REUTERS
<突然発表された迎撃ミサイルシステム導入中止の判断は、理にかなっている上に日米双方にとって良い機会に>
この6月、日本が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の配備計画を停止したというニュースは、日米の多くの国家安全保障関係者を驚かせた。
計画停止の理由は理解できる。費用は膨れ上がり、技術的な問題もあった。しかし計画停止によって、日本の安全保障と日米関係にさまざまな問題が生じかねない。
これまで日米同盟でそうだったように、今回の緊張も両国が乗り越えられるものなのかもしれない。だが、これにより日米同盟が強まるのか弱まるのかは、まだ分からない。
日本の河野太郎防衛相は、計画停止に至った日本側の懸念は主にコストと技術的な問題の2つだと語った。まず、迎撃ミサイルブースターが住宅地に落下するのを完全に制御する自信がなかった。河野によればソフトウエアを修正してもうまくいかず、ミサイルのハードウエア自体の再設計が必要になる可能性があった。それには18億ドルの追加費用と10年の期間を要する。この費用と時間を考慮すると、国家安全保障会議(NSC)で最終的に承認された計画を保留せざるを得ず、事実上、計画を断念することになった。
傷が浅い段階での決断
イージス・アショア計画の費用が上積みされていったのは事実だ。当初の見積もり費用は、購入費に30年間の運用・維持費を加えて21億5000万ドルだったが、総額は41億ドルに膨れ上がり、さらに18億ドルの追加投資を迫られた。その上、政府の新型コロナウイルス対策に関する追加歳出によって、防衛予算が削減される可能性も出てきた。傷が浅いうちに計画を断念したのも理解できる。
日本の弾道ミサイル防衛システムは、2層防衛を基本としている。海上自衛隊は、ミサイルを標的にできる迎撃装置を備えたイージス艦を7隻配備している(近く8隻に増える)。海自のイージス艦が迎撃に失敗した場合、ミサイル防衛の役割を担うのが航空自衛隊だ。地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を導入した空自の高射隊は全国に配備されている。
もともとイージス・アショアの目的は、イージス艦の追加支援だった。2017年に閣議決定した計画の下、日本はアメリカからシステム2基を購入し、2025年までに秋田県と山口県に配備する計画を進めてきた。