最新記事

ロシア疑惑

トランプ、ロシア疑惑で有罪になった「お友達」の実刑を免除

Pelosi Calls Trump's Stone Decision a 'Threat' to National Security

2020年7月13日(月)17時20分
ジェイソン・レモン

「友達」のトランプ大統領が刑務所入りを免除してくれて喜ぶストーン(7月10日、フロリダの自宅前で) Joe Skipper-REUTERS

<ロシア疑惑捜査で、トランプのために偽証したとされる男の実刑をトランプが大統領権限で免除。アメリカの法治も終わり?>

カリフォルニア州選出のナンシー・ペロシ下院議長(民主党)は、ドナルド・トランプ大統領が長年の盟友ロジャー・ストーンの刑の執行を免除したことを厳しく批判。このような行動は、「驚くべき腐敗ぶり」を示し、「わが国の安全保障に対する脅威」だと述べた。

ストーンは2016年大統領選でロシアとトランプ陣営の共謀が疑われた「ロシア疑惑」の捜査で、偽証や証人買収を行ったとして禁固3年4カ月の実刑判決を受け、7月14日に収監される予定だった。だがトランプは7月10日、ストーンの刑の執行を正式に免除した。

トランプは以前から、政治コンサルタントで側近のストーンはロシア疑惑を捜査するロバート・ムラー特別検察官から不当に標的にされたと訴え、擁護していた。

「驚くべき腐敗ぶりだ」と、ペロシはCNNの番組で語った。「これはわが国の安全保障を脅かす問題であることも、人々は知る必要がある」

トランプ大統領の弾劾捜査のプロセスは全体として、わが国の安全保障に関するものだった」と、ペロシは言う。ストーンの容疑はロシアと共謀して大統領選をトランプに有利に運ぼうとしたことだからだ。

「ストーンは、議会に嘘をついただけではない。アメリカ国民に嘘をつき、証人を買収した。これは安全保障の問題だ」と、ペロシは強調した。

司法長官とも真っ向対立

67歳のストーンはムラーの捜査の結果として起訴され、証人の買収や捜査官への嘘を含む7件の罪で有罪となった。

背中にリチャード・ニクソン元大統領の顔の入れ墨を入れていることでも有名なストーンは、政界の工作員ともいわれるフィクサー。2016年の大統領選挙運動中に、ロシアのエージェントが盗んだ民主党幹部と民主党全国委員会の電子メールに関する情報をウィキリークスから得ようと試みた。また、自分の行動に関する嘘を裏付けるために、友人に圧力をかけようとした。

ストーンの刑の執行を免除するというトランプの決定は、ウィリアム・バー司法長官の見解と真っ向から対立するものだし、著名な共和党議員数人も、今回のトランプの行動を強い調子で批判している。

「検察の主張は正しく、裁判官が最終的に下した判決は公正だったと思う」バーはトランプの決定に先立つ8日の時点で、ABCニュースで語っている。

トランプと何度も衝突しているユタ州選出のミット・ロムニー上院議員(共和党)は、11日のツイートで大統領の決定を強く非難した。「前例のない歴史的な腐敗だ。アメリカの大統領が、その大統領を守るために嘘をつき、陪審員によって有罪判決を受けた人の刑を免除するとは」

<参考記事>トランプの盟友、ロシア疑惑巡り偽証罪で米特別検察官が起訴
<参考記事>どこが違う? トランプ・ロシア疑惑とウォーターゲート

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は続伸、個別物色広がる 買い戻し中心

ワールド

トランプ氏、米政府職員の採用凍結延長へ 7月まで

ワールド

ウクライナ中銀、金利据え置き 25年成長率予想を3

ワールド

トランプ氏、水産物生産拡大で大統領令 海洋保護区を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中