「バイデン大統領」に備える投資家 ドル売りに米株保有の圧縮も
米大統領選で野党・民主党の候補指名を確定させたバイデン前副大統領の支持率が、現職のトランプ氏を上回り続けている状況を受け、一部の投資家はバイデン氏が勝利する展開に備えつつある。6月30日、デラウェア州ウィルミントンで撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)
米大統領選で野党・民主党の候補指名を確定させたバイデン前副大統領の支持率が、現職のトランプ氏を上回り続けている状況を受け、一部の投資家はバイデン氏が勝利する展開に備えつつある。
11月3日の本選までまだ4カ月残っており、さまざまな変化が起こり得る。多くの投資家の目がなおも、回復がようやく始まった米経済が新型コロナウイルスの感染再拡大からどんな影響を受け得るのかに向けられているのも確かだ。
それでも資産運用担当者の中には、既にバイデン氏当選の可能性を見越して、ドルを売ったり、米国株の保有規模を圧縮したりする動きが見られる。
フェデレーテッド・ハーミーズのチーフ株式市場ストラテジスト、フィル・オーランド氏は「トランプ氏の支持率は崖っぷちの水準まで下がった。市場はここに注目し『今選挙があればバイデン氏が勝つ』と告げている」と指摘した。
最新のロイター・イプソス世論調査では、バイデン氏の支持率はトランプ氏を8%ポイント上回っている。新型コロナ問題を巡るトランプ氏の対応についての評価は急落の一途だ。
ではバイデン氏が当選し、場合によっては民主党が上下両院の過半数を制すると、どういうことが起きるのか。アナリストの見立てでは、トランプ氏が推進し、米国株市場が好感してきた法人減税や規制緩和が巻き戻される恐れがある。
S&P総合500種<.SPX>は、コロナ問題による急落があったにもかかわらず、トランプ氏就任以降では約37%上昇している。ただ、以前の民主党政権下でもバラク・オバマ氏とビル・クリントン氏の1期目にはそれぞれ85%と79%の上昇を記録した。
アムンディ・アセット・マネジメントによると、バイデン氏が次期大統領になれば法人税率が28%に上がる可能性が高く、トランプ氏と共和党主導の議会が2017年終盤に打ち出した税率引き下げの半分が帳消しになりそうだ。
同社のポートフォリオマネジャー、パレシュ・ウパダヤヤ氏は、これがS&P500種企業の1株利益を約20ドル減らし、投資家の米国株離れとドル安につながりかねないとの見方を示し、ドル売りを進めている。
ラファー・テングラー・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、アーサー・ラファー・ジュニア氏も先週、ドル買いポジションを巻き戻した。バイデン氏勝利で経済成長が鈍化し、ドルに下げ圧力がかかるとの読みだ。なお、ラファー・ジュニア氏の父親は、トランプ氏の経済顧問を務めていた。
実際、通貨先物市場では、ドルの売り持ち規模が最近になって2年ぶりの高水準に膨れ上がった。