最新記事

ルポ新宿歌舞伎町「夜の街」のリアル

【独占】押谷仁教授が語る、PCR検査の有用性とリスクとの向き合い方

SPEAKING OF RISKS AND TESTING

2020年7月31日(金)06時40分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

magSR200730_Oshitani2.jpg

HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN

そうすると、国民全員PCRを毎日やらないといけなくなる。だが例えば国民全員PCRを毎日、2週間続けたとしても、今日陰性だった人が明日陽性になるかもしれず、その人は既に誰かにうつしているかもしれない。だから結局、国民全員PCRをやっても感染を制御できない。

今われわれが考えているのは、いかにして感染している確率の高い人を選択的に検査していくかということ。軽症者も含めて感染している確率の高い人を見つけるということは非常に難しいが、例えばクラスターを形成した場にいた人たちは感染している確率の高い人ということになる。

今その辺で歩いている人たちを、ちょっとPCRしませんかと、献血に協力してくださいというような形でやったとしても、これは感染している確率の非常に低い人たちに検査をするということになる。

──新宿区や新宿の保健所は、ホストクラブの関係者を広く濃厚接触者と見なし早期に検査する方法を取っている。これの評価を聞きたい。

その方法は、ある程度感染している確率の高い人たちということになる。そのような人たちの間で陽性者を見つけることができれば、周りの感染連鎖を追うことができる。それがきちんとできたのが、2月に大阪のライブハウスで発生したクラスターだった。店名を公表して、感染リスクのある人たちの多くが名乗り出て、感染連鎖をほぼ突き止め、各県にまたがる全体像を浮き上がらせることができた。そうすることで、周辺の感染連鎖を断つことができた。

いま東京では1日の新規感染者数が100人を超えているが、接客を伴う飲食店などで集団検診をやると、感染している確率が高い人たちなので陽性者が一気に増える。3月下旬には接客を伴う飲食店関連の感染者はほとんど見えていなかったが、今は検査への協力者が増えたことで見えてきているというのが、感染者数が増えていることの一因となっている。一方で、地域内外への感染連鎖の全体像が、ライブハウスで見えたようにはなかなか見えてこない。

──それは当然のことで、他人に明かしにくい秘密は誰しもある。信頼関係が築けない限り積極的に秘密を言いたがらない、ということだろう。

まずその人たちに、検査を受けるインセンティブを与えないといけない。今われわれに対して「歌舞伎町などのお店は閉めるべきだ」と言ってくる人がいるが、そこを閉めるとほかの繁華街にウイルスを拡散させてしまう可能性がある。感染リスクが高い人たちが別の地域に移動し、感染エリアが広がっていく。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン

ワールド

EU、米と関税巡り「友好的」な会談 多くの作業必要

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、米中緊張緩和の兆候で 週

ビジネス

米国株式市場=4日続伸、米中貿易摩擦の緩和期待で 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中