WHO脱退も対中強硬姿勢も自分の失態隠し。トランプ外交が世界を破壊する
Trump Scapegoats China and WHO—and Americans Will Suffer
ジョージタウン大学の医療と法の専門家アレクサンドラ・フェランによると、アメリカがWHOから合法的に脱退するには、多額の金を払わなければならないし、米議会の承認なしに勝手に脱退することもできない
WHO憲章は、脱退の方法を具体的に定めている。脱退にさいして加盟国は負担金の未払い分などすべての債務を解消しなければならない、とフェランは言う。上院の承認と、および1年前の通知も必要だ。
医療政策に関する調査・提言を行うカイザーファミリー財団によると、負担金はGDPに基づいて算出されるため、アメリカの拠出額は過去10年間で年1億7000万ドルから1億1900万ドルだった。
その上アメリカは年間最大4億ドルの支援をしており、年間予算約48億ドルのWHOの最大の寄与者となっている。
だがトランプ政権になってからは常習的に負担金支払いを引き延ばしており、2019年の負担金8100万ドル、2020年の1億1800万ドルが未払いになっている。そして、トランプ政権は2018〜2019年にオバマ政権が約束した9億ドルの寄付をまだ認めていない。
最も貧しい人々を見捨てるのと同じ
トランプが議会や財政のハードルを越えることができるとしても、重大なモラルの問題は残る。WHOの支出のほとんどは、世界で最も貧しく、最も不十分な医療プログラムに対するものだ。
アメリカからの資金の欠如に加えて、コンゴ・エボラ出血熱の流行やCOVID-19パンデミックを含む緊急事態もあり、WHOは他の資金源の資金不足とコスト超過で13億ドルの赤字に直面している。
世界の医療従事者が外出禁止令やCOVID-19との戦いに駆り出されるなか、ポリオの撲滅活動など世界中の予防接種プログラムの実施は困難になっている。
WHOを含む多くの国際機関は5月22日、1歳未満の子ども8000万人が麻疹、ジフテリア、ポリオなど、ワクチンで予防可能な疾患にかかる危険があると警告した。アメリカがWHOへの財政支援を撤回するとなると、こうしたワクチン接種の取り組みはさらに挫折する可能性が高い。
国連の推定では、パンデミックが世界経済に与えた影響により、1億3000万人が極度の貧困に陥り、さらなる医療の需要を生み出す可能性があるという。マラリア対策は、サプライチェーンの問題や都市のロックダウンで混乱し、蚊帳や薬、検査装置の配布が中断されている。
他国との協調を拒み、自分に向きそうな非難の矛先を中国に向けるトランプの幼稚なやり方のつけは、COVID-19との戦いの現場や、国連の救急医療や子どもの予防接種、必須の医薬品、指導に頼る貧困層にまわってくる。
自分の失敗から世間の目をそらすために他人を罰するというトランプのやり方は、選挙を控え、任期終了間近の大統領としては理解できる。それでも非難されるべき行為であることには違いない。
(翻訳:村井裕美、栗原紀子)
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