大統領就任20年、ロシアを「巻き戻した」プーチンの功罪を9人の識者が斬る
HOW PUTIN CHANGED RUSSIA FOREVER
新型コロナウイルスの感染拡大で原油需要が停滞するなか、プーチンは今後、原油価格の急落に対処しなければならない。自身の任期を2036年まで延長可能とする憲法改正案の国民投票も延期されたままだ。
反民主国家に模倣されるタフな男のイメージ戦略
■アンドレア・ケンドールテイラー(新米国安全保障センター・シニアフェロー)
過去20年間、プーチンを突き動かしてきたのは権力維持への情熱だ。彼はそのために国家を弱体化させ、競争を排除し、政治体制を私物化した。年輩のロシア人はプーチンが1990年代の混乱後の国を救ったと評価するが、実際には私腹を肥やしただけ。自身の権力が脅かされるという強迫観念が高まるにつれ、プーチンはデジタル戦略を駆使して国民の自由を抑圧してきた。
国内に弱みを抱えながらも、プーチンは国際社会でのロシアの地位を高めてきた。権力への歯止めがないことに加えて、軍の近代化への投資や、ロシアと西欧の非対称の利害関係に付け込む能力のおかげで、彼は国際法に違反しながらも多くのチャンスをものにしてきた。
一方でプーチンは、自国の影響力の限界も理解している。だからこそ西側の民主主義を傷付け、ロシアの相対的地位を高めようとするのだ。
タフな男というイメージ戦略を模倣する反民主国家の指導者は多い。プーチンが西側諸国から距離を置くほど、シリアやイラン、ベネズエラ、中国の政権との距離は縮まっていく。まさに「類は友を呼ぶ」だ。
プーチン自身が築いたプーチン頼みの体制
■オルガ・オリカー(国際危機グループ欧州・中央アジア事業部長)
ロシア人のプーチンに対する思いは、世界の多くの国々の対米感情に似ている。かつてプーチンが成し遂げたこと(その記憶はどんどん薄れつつある)には感謝しながらも、最近の振る舞いには眉をひそめざるを得ない。国民はプーチンの支配が続くことに不安を抱いているが、プーチンに代わる存在は見当たらない。
プーチン支配下でロシア経済は息を吹き返したが、その後また停滞に陥った。ロシアが国際政治の表舞台に返り咲いたのも、この20年の特筆すべき現象だ。
とはいえ、プーチンの外交政策の目標は、ソ連時代はおろか帝政時代から変わらない昔ながらのものにほかならない。外交だけではない。経済の浮き沈みも、自由化と締め付け強化の繰り返しもそうだ。