最新記事

中台関係

中国全人代、台湾統一巡り「平和的」との文言削除 李克強首相の政府活動報告で

2020年5月22日(金)19時16分

中国の李克強首相(写真)は、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の冒頭、中国政府は台湾の市民に対し、中国とともに台湾の独立に反対し、中国との「統一」を推進するよう奨励すると語った。写真は北京で22日撮影(2020年 ロイター/CARLOS GARCIA RAWLINS)

中国の李克強首相は22日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で政府活動報告を行ったが、台湾との「再統一」に触れた部分でこれまで通例として付与していた「平和的」との文言を削除した。台湾との関係が悪化し続ける中、政策変更の可能性を示唆した。

台湾側は新型コロナウイルスの流行が始まって以降、中国の戦闘機や海軍艦艇が演習で定期的に台湾に接近していることを挙げ、中国による軍事的なハラスメントが強まっていると批判。中国側は通常の活動だとしている。

中国は台湾について、最も注意を要する重要な領土問題としており、台湾を自国の省の一つとして「国家統一」する手段として、武力行使の選択肢を放棄したことはない。

この日の演説で李克強首相は、「台湾の独立を目指す活動家の動きに断固として反対し、これを阻止する」と強調。台湾の市民に対し「台湾独立への反対と中国の再統一促進に参加することを奨励する。こうした取り組みを通じて、活気に満ちた中国の美しい未来を構築できる」とし、中国との「統一」を推進するよう呼びかけた。

さらに、台中間の交流や協力を促進し、台湾市民の福祉を守るための政策を改善していく方針も示した。

今回の演説はこれまでと異なり、「再統一」の前に「平和的」との文言が盛り込まれなかった。中国の指導者は少なくとも過去40年間、全人代で演説して台湾に言及する際、この文言を付けることが通例だった。

「平和的」との文言が盛り込まれなかったことについて、台湾当局高官はロイターに対し、中国の対台湾アプローチの根本的変化を示唆するものではないとの見方を示した。

同高官は「彼らは依然として、間接的な言語表現で平和的統一の概念を語っている」と指摘。李首相による両岸交流や経済統合に関する発言も踏まえた分析として、「(政府活動報告の内容は)中立だ。われわれはそのようには(中国の対台湾アプローチに根本的変化があったとは)見ていない」と述べた。

中国の国務院台湾事務弁公室にコメントを求めたが、今のところ回答は得られていない。

台湾の蔡英文総統は20日、2期目就任にあたっての演説で、台湾は中国との対話を望むが、中国が提案する「一国二制度」は受け入れられないと語っている。

*内容を追加しました。

[北京/台北 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20200526issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は?


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中