韓国、セウォル号沈没事故から6年 政争に阻まれ原因究明はいまだ道半ば
遺族の個人情報をネットにさらした国家機関
このように、6年が過ぎてもなお韓国では注目を集めるセウォル号事故だが、4月22日には「社会的惨事特別調査委員会」による調査報告会見が開かれた。そこでは、事故後に国家情報院が秘密裏に遺族の情報収集を行っていたことが報告され、波紋を呼んだ。
報告会見で明るみにされた証拠映像には、事故の真相究明を求めて38日間のハンガーストライキ後に入院していた遺族の入院先に潜入し、病院院長に情報を聞き出す国家情報院職員の姿が映された防犯カメラの映像が公開された。8月22日から26日の間、父親と院長との会話や個人情報、また担当医やお見舞いに訪れた人々などにも調査が及び、すでに該当する職員の陳述も確保済みだという。
さらに問題視されているのは、そこで得た情報などをもとに世論操作用動画を、国家情報院が公費を使って作成していたという事実だ。これはYouTube等の動画サイトで流され、そのうえ、遺族らを嘲る内容を数多く投稿していた通称「イルベ」と呼ばれる韓国の右翼系掲示板サイトに、遺族の個人情報を流していたという記録まで公開されている。
社会的惨事特別調査委員会は、これらの活動が国家情報院法で禁止された職権乱用に相当するとして、現在検察に捜査を依頼したと発表した。
何度も挫折してきた真相究明
さて、今回の記者会見で多くの証拠と事実を公開した「社会的惨事特別調査委員会」とは、一体どんな組織なのだろうか。
セウォル号事故が発生し、真相究明が急がれていた当時、事故から約8カ月後の2015年1月に第1期調査委員会が発足したが、2016年6月に調査が終了してしまった。しかも214件にも及ぶ調査内容のうち正式に調査終了し公開された内容はたった1件しかなかった。
その後、沈没の原因を主に調査するための船体調査委員会が発足し、2017年7月から翌年8月まで活動していたが、調査報告書に記載された沈没理由は「船体自体に欠陥があった」「外部衝撃」の2つとされ、その詳しい原因は謎のままだった。
この内容に納得しなかった世論は、第2期調査委員の発足を要請する。そこで2017年11月に「社会的惨事特別法」が国会本会議で認められ、2018年12月末から「社会的惨事特別調査委員会」が活動を開始した。その調査によって今回の報告記者会見が行われ、これでさらなる原因究明に近づいたと安心したのも束の間、委員会は今年の12月までで調査を終了しなければならないという。
その理由は、2017年に「社会的惨事特別法」を各界で成立させる際に、野党(=事故当時の与党)からの反対意見などと調整した結果、最長2年までしか事故調査できない規定となったためだ。特別調査委員会の調査開始が2018年だったため、今年の12月で調査期間満了となり、事故にまつわる真相究明が急がれるところだ。