韓国、セウォル号沈没事故から6年 政争に阻まれ原因究明はいまだ道半ば
2014年4月16日、高校生ら多くの乗客が犠牲となったセウォル号沈没事故。 KIM HONG-JI - REUTERS
<4月の総選挙で文在寅率いる革新系与党が勝利した韓国。だが今もなお朴槿恵時代のトラウマがつきまとう>
4月16日でセウォル号沈没事故から6年目を迎えた。大型旅客フェリーの沈没で、修学旅行中だった高校生を含む299名の犠牲者と5名の行方不明者を出した2014年のこの大惨事は、日本でも連日大きく報道された。
事故発生日に合わせて、韓国では4月15日にセウォル号の事故を題材にした映画『幽霊船』が公開された。新型コロナウイルスの影響でアート系映画館が軒並み閉館している中でも、この映画は公開初週末までに累計1万5591名を動員し、その週の単館系映画の観客動員1位を記録している。
この映画は、セウォル号の航路を記録したブラックボックス「船舶自動識別装置(通称AIS)」を、誰かがデータ操作したという情報をもとに、事故に関する情報が政府の意向に添って改ざんされたことを告発した再現ドキュメンタリーだ。やはりセウォル号事故を扱って累計54万人の観客を動員した映画『その日、その海』(2018年)のスピンオフ作品であることも大きな注目を集めた。
多くの映画が描いたセウォル号事故
日本では余り知られていないが、韓国ではこれまでにもセウォル号に関する映画が多数制作されてきた。特に有名な作品といえばドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル セウォル号の真実』だろう。2014年の第19回釜山国際映画祭の招待作品となっていたが、上映反対運動が発生。上映は映画祭実行委員会によって強行されたが、翌年の映画祭には韓国映画振興委員会からの支援予算が14億6000万ウォンから8億ウォンに削減されるなど、政治的圧力を受けたことでさらに波紋を広げた。
この映画も、ダイビング・ベルと呼ばれる装置を使って行われたセウォル号の救助活動に関して起きたフェイクニュースや疑惑の告発映画だ。その後、続編となる『After Diving Bell』も発表されている。
また、今年『パラサイト 半地下の家族』が4冠を受賞し世界中が沸いた米国アカデミー賞だったが、実は短編ドキュメンタリー部門にももう1本韓国映画がノミネートされていた。その映画『不在の記憶』は、実際の事故発生当時の通信記録や、被害者となった生徒たちが家族へ送信したメッセージを中心に構成されている。後半では、救助にあたった民間ダイバーたちのその後にもスポットが当てられている。救助活動は、ダイバーたちにも大きなトラウマを残したが、あるダイバーはその後耐えられずに自ら命を絶ってしまったという。
ドキュメンタリー映画ではなく、フィクション映画ももちろん存在する。今年6月5日に日本で公開予定されている映画『君の誕生日』は、遺族である両親を中心に、残されたものの苦しみと戦いを描いた作品だ。