最新記事

中国

習近平、トランプにひれ伏したか?徴収した報復関税の返還命令

2020年5月15日(金)21時50分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型コロナウイルス論争に関する「舌戦」はさておいて、中国は実効的には世界最大の強国・アメリカには今のところ逆らわず、返す刀で「弱い国」と中国が看做(みな)している「オーストラリア」を斬りつけるという曲芸をやってのけている。

オーストラリアの肉製品企業4社からの輸入を停止

同日(5月12日)、中国政府はオーストラリアの企業4社からの肉製品の輸入を停止する措置を取ると表明した。

もし今コロナ問題がなかったら、実はほぼ当然のような動きなのである。

2019年12月16日のコラム<棘は刺さったまま:米中貿易第一段階合意>をご覧いただければわかるように、筆者は昨年末の時点で、「アメリカから農産物を余分に輸入すると中国が約束したのなら、農産物が余って、結局どこかの国からの輸入を減らす以外にない」として、その国とは「オーストラリア」か「ブラジル」だろうと分析していた。

この農産物は畜産物に関しても言えることで、フォーカスは「オーストラリア」に絞られる。

しかし、今はどういうタイミングかを考えてみれば、誰でも邪推もしたくなるだろう。

それはオーストラリアのモリソン首相が「新型コロナウイルスの発生源などを調べるため、独立した調査委員会を立ち上げるべき」と提案し、中国外交部が、この提案に対して「国際協力を妨害するもので、支持は得られない」と反発していたという事実があるからだ。

だからこれは中国のオーストラリアへの「報復措置」で、意趣返し以外の何ものでもないと誰でもが考えてしまうのである。

かてて加えて中国は、WHOが組織する調査委員会なら受け入れると言っている。ということは親中のテドロス事務局長が采配を振るう調査ならば調査結果にも「柔軟な」調整があり得るだろうと考えているのだろうと、誰でも思うではないか。

おまけに5月14日のコラム<感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか_モスクワ便り>に書いた通り、オーストラリアはこの対中損害賠償を求める「8ヵ国聯合」(香港メディアの命名)の中の有力な一国であり、かつファイブアイズ(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの間の諜報同盟)の一員であり、その中では反中的とみなされている。

コロナに関する独立調査委員会の提案も、もちろんトランプ大統領らと相談の上だ。

だから中国はいきり立ってオーストラリアを攻撃しているのだが、肝心かなめのアメリカには舌戦以外では実効的措置を取っていないというのは、何とも「中国的」ではないか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナのNATO加盟、同盟国説得が必須=ゼレン

ワールド

インド中銀がインフレ警戒、物価高騰で需要減退と分析

ワールド

米国、鳥インフルで鶏卵価格高騰 過去最高を更新

ワールド

トランプ氏次男妻、上院議員への転身目指さず ルビオ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 5
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中