最新記事

韓国

韓国・文在寅政権にとって日韓通貨スワップの要請は諸刃の剣

2020年4月8日(水)18時30分
佐々木和義

日本批判をしてきた文政権にとって日韓スワップは微妙...... REUTERS/Kim Hong-Ji/Pool

<韓国金融界や経済界は日韓通貨スワップの再開に期待の声もあるが、与党支持者の間では日韓スワップに批判の声もある......>

新型コロナウイルスの感染者拡大で経済が萎縮するなか、韓国銀行は120億ドルを市中に供給した。米韓通貨スワップを原資に、2020年3月31日、銀行法で定める銀行と韓国産業銀行、中小企業銀行、韓国輸出入銀行を対象に入札を行った。他の金融機関は落札者から供給を受ける。

米連邦準備理事会は9カ国と通貨スワップを締結

米連邦準備理事会(FRB)は3月19日、新型コロナウイルスの拡大による経済の混乱を緩和するため、オーストラリアやブラジルなど9カ国の中央銀行と総額4500億ドルの通貨スワップを締結した。6カ月を予定し状況を見て延長を検討する協定で、韓国銀行は600億ドルの協定を締結した。

通貨スワップは、必要に応じて自国通貨を相手国の中央銀行に預け、相応する外貨を借りることができる制度で、借り受けた中央銀行は外貨を市中に流通させ、決済が不能となる事態を防ぐが、流動性が確保されるなど為替市場の安定化に寄与する効果がある。

韓国銀行はカナダ、中国、スイスなど7カ国と1332億ドル相当の通貨スワップ協定を締結している。外貨準備高は6か月以上の輸入決済代金に相当する4019億ドルで、すぐに問題が生じることはないが、安心できる規模ではない。

韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は2月22日と23日、サウジアラビア・リヤドで開かれた20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)に出席し、ジェローム・パウエル米FRB議長と会談を行って、米韓スワップを要請していた。

1回目の米韓通貨スワップは延長されなかったが......

韓国は貿易依存度が国内総生産(GDP)の約70%と米国や日本と比べて2倍から3倍高く、国内資本市場も外国人投資家が占める割合が40%に達するグローバル経済危機に脆弱な国のひとつである。1ドル=1100ウォン前後で推移していた外国為替市場は3月20日には1ドル=1285.70ウォンまでドル高ウォン安が進行した。2008年から09年に広がった金融危機以降、最大の変動幅だ。

1997年にタイを中心にアジア通貨危機が始まったとき、韓国では財閥が次々に破綻し、株価は暴落、国際通貨基金(IMF)の支援を受け、アメリカのサブプライムローン問題を発端とするいわゆるリーマンショックでも深刻な経済危機に陥った。米国と電撃的に締結した通貨スワップを利用した為替介入で一時的な安定を取り戻している。

1回目の米韓通貨スワップは2008年10月30日に電撃的に締結された。規模は300億ドルで2009年4月30日まで6カ月の期間限定だったが、2度の延長を経て2010年2月1日に終了した。リーマンショック前の2008年8月に1ドル=1089ウォンだった為替相場が1ドル=1200ウォンを超えたあたりから外貨の需給バランスが崩れ、一時1ドル=1500ウォンを超える水準までウォンが下落したのだ。

米韓通貨スワップの期限となったとき、韓国は延長を要請しなかった。外為市場は1ドル=1100ウォン台で安定しており、また、友好な関係にあった日本との通貨スワップや中国とも560億ドル相当の通貨スワップを締結していたのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売

ビジネス

NY外為市場=ドル、低調な米指標で上げ縮小 円は上

ワールド

ドイツ、ロシアの偽情報拡散に警告 23日の総選挙控

ワールド

トランプ氏、5月にモスクワ訪問せず ロシア・ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中