ヨーロッパを再び襲う難民・移民危機
Thousands of Refugees Attempt to Enter Europe From Turkey
トルコとギリシャの国境に集まった移民たち(2月29日) Huseyin Aldemir-REUTERS
<トルコに金を払って一度は「片付けた」難民たちが、国際情勢の変化でまた欧州を目指し始めた>
ギリシャ当局は、2月29日に国境地帯でトルコ警察隊と衝突し、EU域内に逃げてこようとした数千人もの難民を阻止したと述べた。トルコのエディルネ県にあるパザルクル検問所にいるドイツ国際公共放送ドイチェヴェレの記者によると、ギリシャ警察隊は難民に向かって催涙ガスを使用したという。難民は投石で対抗した、とAFPは報じている。
ギリシャとトルコの国境地帯に難民が押し寄せたのは、トルコ政府が、難民がEU域内に入るのを止めなくなったからとみられる。
ロシア軍の支援を受けるシリア軍は2月27日、トルコ軍の支援を受ける反体制派の拠点、シリア北部イドリブ県で空爆を行い、トルコ軍兵士が少なくとも33人死亡した。
トルコ大統領府通信局のファフレッティン・アルトゥンは、シリアからの難民受け入れに対してEUから十分な支援が得られないなら、国境警備を緩めるしか「選択肢がない」と述べたという。これまでにトルコが受け入れたシリア難民は340万人以上に上っている。
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領が懸念しているのは、イドリブ県に対する攻撃が続くことで、さらに数十万人もの難民がトルコに押し寄せてくることだ。トルコは、シリアの紛争地帯から逃れてきた難民であふれ返っている。
トルコが難民をEU域内へ越境させることを示唆したのは、西側諸国と北大西洋条約機構(NATO)に圧力をかけ、シリアの進撃を阻止するための支援を引き出そうという策略かもしれないと、英スカイニュースは報じた。
EUへの扉が開く!
AFPによると、エルドアンは2月29日、トルコはシリア難民をこれ以上支援することはできないと述べた。そして、「私たちは扉を閉鎖しない。それはなぜか? EUが約束を守らないからだ」と語り、2016年3月にトルコとEUが交わした、トルコが難民のEU流入を阻止する見返りにEUから経済支援を受けるという合意に言及した。
ドイチェヴェレの記者は、国境の様子について、難民のなかにはフェンスの下をくぐって国境地帯に入ろうとしている人がいたと語った。催涙ガススプレーの影響で、多くの人が目に涙を浮かべていたという。スカイニュースはツイッターに、国境の騒乱を映した動画を投稿。そこには幼い子どもたちも映っている。
投稿したリポーターによれば、彼の周囲にいる難民たちの多くは何年も前に欧州を目指してやってきたアフガニスタン人などだという。EUが扉を閉ざしたのでトルコで生きていこうとしたが医療にもかかれないなど暮らしは厳しく、エルドアンがギリシャとの国境を開くと聞いてやってきたのだと。
"They have been met by volleys of tear gas."
— Sky News (@SkyNews) February 29, 2020
Refugees have gathered at the Turkish-Greek border after authorities hinted that the path would be clear for people to cross into Europe there. @Stone_SkyNews says "clearly this was never the case".
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BBCによると、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は、トルコとの国境にどれほど多くの難民が押し寄せようとも、「ギリシャへの不法入国は許されない」と述べている
ギリシャ政府報道官ステリオス・ペタスは、ギリシャは「組織立った大規模な不法攻撃にさらされた。国境への侵入行為が起きたが、何とか耐えた」と述べ、「4000人以上がギリシャへの不法入国を試みたが、それを阻止した」と続けた。
オバマ政権でシリア問題の特使を務めたフレデリック・ホフは、アメリカはこの問題に介入し、トルコによる対シリア軍・対ロシア軍の軍事活動を支援すべきだと述べた。(翻訳:ガリレオ)
<参考記事>EU、不法移民規制でトルコと合意
<参考記事>EU諸国の無策で再び訪れる欧州難民危機