最新記事

軍事衝突

シリア政府軍、北西部の反政府勢力の拠点に進軍 トルコは攻撃継続を警告

2020年3月3日(火)11時22分

シリアのアサド政権軍は、反体制派の拠点である北西部イドリブ県の要衝サラケブに再び進軍した。一方、反体制派を支援するトルコはアサド政権軍への攻撃を継続する考えを示した。2月28日、空爆のあったサラケブで撮影(2020年 ロイター/Umit Bektas)

シリアのアサド政権軍は2日、反体制派の拠点である北西部イドリブ県の要衝サラケブに再び進軍した。一方、反体制派を支援するトルコはアサド政権軍への攻撃を継続する考えを示した。

トルコはアサド政権軍が反体制派の最後の拠点であるイドリブ県の制圧を止めるため、過去1カ月でシリアに多数の兵士と軍車両を投入しており、シリア北西部ではここ数日で戦闘が激化。トルコとシリアの国境地帯では12月以降、100万人の難民が発生しており、国連は9年前から続くシリア内戦で最悪の人道危機となっている可能性を指摘する。

サラケブで取材するシリア国営テレビの記者によると、反体制派の撤退を受け、アサド政権軍は同市内をパトロールしているという。一方、反体制派筋は、同市の西部で衝突が継続していると述べた。人権団体「シリア人権監視団」(英国)は、反体制派は再びサラケブを奪還することを狙っていると指摘した。

サラケブの北には政権軍が制圧したアレッポ市、西には反体制派が掌握するイドリブ市があり、双方にとって重要性は高く、一進一退の攻防が約1カ月前から続いている。

トルコは前週に自国軍の兵士34人がイドリブ県で殺害されたのを受け、シリアへの軍事介入を強めており、1日には同県でシリア軍機2機を撃墜し、アレッポ県の少なくとも1カ所の軍用空港を攻撃した。

トルコのエルドアン大統領はアンカラで演説し、「(シリア)政権の人的そして軍装備の損失は始まったばかりだ」と強調、シリア軍にトルコが決めた境界線まで撤退するよう求めた。

アサド政権を支援するロシアは、シリア上空を飛行するトルコ機の安全は保証できないと警告。シリア政府はイドリブの空域を閉鎖すると表明した。

エルドアン大統領は、5日にモスクワでロシアのプーチン大統領と会談し、イドリブを巡り合意を目指す考えも示した。「停戦やそのほかの必要な措置を取るというのが私の希望だ」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200310issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月10日号(3月3日発売)は「緊急特集:新型肺炎 何を恐れるべきか」特集。中国の教訓と感染症の歴史から学ぶこと――。ノーベル文学賞候補作家・閻連科による特別寄稿「この厄災を『記憶する人』であれ」も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中