最新記事

米大統領選

「サンダース大統領」に金融業界が恐れる最悪の可能性

Who’s Afraid Of President Sanders?

2020年3月2日(月)16時15分
パラシュ・ゴシュ

サンダース上院議員は予備選緒戦の勝利の勢いを維持できるのか SHANNON STAPLETON-REUTERS

<ウォール街は戦々恐々としている。民主社会主義者を自任するサンダースはウォーレンを副大統領候補にするか、財務長官に指名する可能性があるとされ、そうなれば......>

11月の米大統領選に向けて、民主・共和両党の指名候補を一本化するための予備選が始まった。民主党は依然8人もの候補が乱立しているが、意外にも緒戦でトップに立ったのは、バーニー・サンダース上院議員だった。

民主社会主義者を自任するサンダースは、民主党内でも極左に近い考えの持ち主。78歳という高齢もあり、勢いがあると報じられても、どこかジョーク扱いされていた。

ところがフタを開けてみると、アイオワ州党員集会で事実上の1位タイ、続くニューハンプシャー州予備選では堂々の第1位。サンダースが民主党の大統領候補指名を勝ち取り、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領と一騎打ちになる可能性が、急に現実味を帯びてきた。

それは「サンダース大統領」が誕生する可能性が高まったことも意味する。

「まさか」と、アメリカの金融業界は、まだその可能性を真面目に受け止めていない。その一方で、そんなことになれば米経済は大打撃を受けると警告する声も出てきた。

株価は3~4割下落?

なにしろサンダースが唱える政策の多くは、金融業界にとって恐怖そのものだ。

歳出拡大、法人税率引き上げ、国民皆保険(メディケア・フォー・オール)、民間医療保険の廃止、数兆ドル規模の気候変動対策、学生ローンの債務帳消し、公立大学の無償化、社会保障の拡充、発電事業の国有化、富裕税、銀行業と証券業の分業を定めたグラス・スティーガル法の復活......。

投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラックCEOは、「投資家がサンダースの唱える財政政策を考慮するようになれば、長期債相場と株価の両方が動揺するだろう」と警告する。

ヘッジファンドのスタンレー・ドラッケンミラーは昨年6月、サンダースが大統領になれば、株価は30〜40%下がる恐れがあると警告した。

「誰もが今より貧しくなるという意味では平等だ」

ヤフー・ファイナス編集者のブライアン・ソジーは、サンダースはエリザベス・ウォーレン上院議員を副大統領候補にするか、財務長官に指名する可能性があると書いている。

「そうなれば、金融業界の規制強化を唱える2人が、FRB(米連邦準備理事会)議長を選び、FRBそのものを作り替える可能性がある」

だが、サンダースが大統領になったからといって、過激な政策を全て実現できるとは限らないと、JPモルガンのストラテジスト、ジェシー・エジャートンは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中