エスカレートする軍事演習......アメリカとロシアの新冷戦が近づいている
Is the Cold War Back?
対ロシアとの規模の違いが際立ったのが、対イランだ。12月4日、8カ月に及ぶ中東での任務を終えたリンカーンはホルムズ海峡を通過して帰還。その1カ月後、イラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官の殺害でイラン危機がエスカレートした。
ボルトンが発表した急派には爆撃機6機も含まれていたが配備は短期間で、大隊規模の海兵隊部隊も既に中東を離れていた。緊急配備された地上軍は1万人足らずで、大部分がパトリオット対空防衛システム部隊。空軍機がリンカーンの航空団を増強した。対イラン攻撃の全貌は、たったの3戦隊だった。
国防総省の文書によれば、同じ頃、米軍戦闘機の9つの飛行中隊が対ロシア戦に備える軍事演習のためヨーロッパに配備された。6月20日、イランが米軍の偵察ドローンを撃墜した時、トルコ中南部コンヤでは演習「アナトリアン・イーグル」が行われていた。トルコはイランに隣接しているが、軍事演習はEDIの資金で行う完全にNATOヨーロッパ中心のものだった。
6月13日にペルシャ湾で石油タンカー2隻が機雷による攻撃を受けた時は、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、黒海では10カ国の特殊部隊が参加する軍事演習が行われていた。北部海域では軍事演習「バルト海作戦」でNATO加盟18カ国およびスウェーデンとフィンランドの艦船50隻、軍用機40機が一堂に会した。リトアニアやポーランド、クロアチアなど7カ所でNATOの演習が進行していた。
衝突回避を目指したが
対ロシア戦を想定した軍事演習に動員されたNATOと同盟国の兵士は5万人超。米空軍のF35戦闘機が初めてフィンランドとノルウェーに配備された。さらにイギリスに前方展開配備されていた米軍のB52爆撃機も加わり、バルト海と黒海の上空で同時にロシアへの模擬爆撃を行った。
バルト海作戦完了直後にはノルウェー領の北極海で軍事演習「ダイナミック・マングース」がスタート。その増強のため黒海での「シーブリーズ」も始まった。米議会でトランプ大統領によるウクライナ疑惑が話題になっていた頃、同国周辺では19カ国から合計で艦船32 隻、軍用機24機が活動していた。
ロシアも黙ってはいなかった。昨年5月、リトアニアで作戦行動中のハンガリーの戦闘機が識別信号を出さずに飛行するロシア空軍機を発見。アラスカ州西岸とアリューシャン列島の上空にもロシアの爆撃機が派遣された。5月末、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、国境付近でNATOの活動が増加している状況に懸念を表明した。