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米イラン危機:戦争は起きるのか

米イラン間の対立激化はプーチンのチャンス

A CHANCE FOR PUTIN

2020年1月17日(金)12時20分
リード・スタンディッシュ、エイミー・マッキノン

アサド(左から2人目)と会談するプーチン(中央)(1月7日) ALEXEI DRUZHININーKREMLINーREUTERS 

<アメリカの評判失墜に乗じて影響力を拡大したいロシアは、米イラン危機にどう出るのか>

ロシアは2015年にシリア内戦への軍事介入を行って以来、中東地域で反目し合う諸勢力のそれぞれと良好な関係を保つ稀有な「仲介役」という地位を築いてきた。

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そして今、この評判を確かなものにする新たな機会が訪れた。1月3日、米トランプ政権がイラクの国際空港でイラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害したからだ。

その報復に、イランはイラクの米軍基地をミサイルで攻撃。中東は混乱に陥り、米イランの関係は開戦の瀬戸際まで一時悪化した。

両国の対立激化はロシアにとってのリスクともなる。しかしウラジーミル・プーチン大統領が長年抱いてきた願い、つまり中東でのアメリカの評判を失墜させ、ロシアの影響力を拡大させるという野望を同時にかなえる絶好の機会にもなる。

今後、ロシアは中東主要国との関係のバランスをどのように取っていくのだろうか。イランとはシリア内戦でのバシャル・アサド大統領支援を通じて結束を強めてきた。一方でイランと敵対するイスラエルやサウジアラビアとも関係を深めてきている。

「ロシアは中東で頼れるプレーヤーの役割を担おうとしている」と言うのは、モスクワのシンクタンクPIRセンターのユリア・スベシュニコワだ。「だが現状に強い危機感も抱いており、可能な限り紛争から距離を置こうとするだろう」

国際社会の不意を突いて行われた司令官殺害で、中東におけるアメリカの信頼は傷ついた。これをロシアは好機と捉えるだろう。ロシアはこれまでも、ウクライナや北アフリカやシリアなど世界各地の危機に乗じて戦略的な目標を達成してきた。

ロシアがウクライナ東部のクリミア半島を併合した際には、米政府は経済制裁を発動した。一方、アメリカのイラクやアフガニスタンでの戦争について、ロシアがアメリカの「偽善ぶり」を批判してきた。

司令官殺害に加え、イランの文化財を狙った攻撃も示唆したトランプ米大統領の発言(のちに撤回)を根拠に、アメリカの行き過ぎた行動を非難しつつ、中東でのロシアの影響力強化に努めることだろう。

ロシア最大の懸案は

「プーチンが自ら旗を振って、反米ムードを盛り上げようとしても難しかった。しかし今回は、トランプがその役を引き受けてくれた」と言うのは、ジョージ・メイスン大学のマーク・カーツ教授だ。

ロシアがイラクに通常軍を配備する事態は考えにくい。しかしロシアの民間軍事会社ワグナー(ロシア政府軍に代わってシリアやウクライナやアフリカで戦闘に参加している)の傭兵が、米軍撤退後に投入される可能性は排除できない。

だが、ロシアは米イラン両国の動きを見ながら慎重に事に当たるとみられる。司令官殺害は非難したが、イラン政府を支援する具体的な行動はまだ何も約束していない。イランの報復を後押しする可能性も低い。

モスクワ国際関係大学(外務省付属の国立大学)のアナリスト、アドラン・マーゴエフによれば、ロシアの最大の懸案は、プーチンが時間をかけて築いてきた足場を崩壊させるような事態をどう防ぐかだ。「ロシアを取り巻く環境はそれほど変わっていない。中東の舵取りが難しいのはいつものこと」。漁夫の利を得るのは、意外に簡単ではない?

From Foreign Policy Magazine

<本誌2020年1月21日号掲載>

【参考記事】米イラン対立、それでも報復が実行される理由
【参考記事】米イラン戦争が現実になる日

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2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

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