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開発援助を軽視するジョンソンの勝利で、イギリスは国際社会の信頼も失う

JOHNSON’S WIN IS A LOSS FOR BRITISH POWER

2019年12月26日(木)19時00分
ゴードン・ブラウン(元英首相)

第二次大戦の終結後、イギリスは外交努力を3つの地域(アメリカと英連邦諸国、そして欧州大陸)に集中してきたが、一つ大事なものを忘れていた。中立的な国際機関だ。フランスはIMFを、北欧諸国は国連平和維持活動などを重視してきたが、イギリスの存在感は薄かった。EU離脱後のイギリスが世界で存在感を維持するには、こうした国際機関と向き合うしかない。しかし国際開発省がなくなれば、イギリスの閣僚や外交官の足はますます遠のくだろう。

トランプ大統領のアメリカは偏狭な一国主義に堕してしまったが、貧困や環境破壊などのグローバルな問題は国家の枠組みを超えている。だからこそ国益を超えた機関がODAを所管する必要がある。国際開発省を格下げすれば、イギリスは貧困の解消に貢献する力も、そうした活動を主導する名誉も失ってしまう。

©Project Syndicate

<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>

【参考記事】数字から見る英総選挙の結果とイギリスの未来
【参考記事】二つのナショナリズムがぶつかるスコットランド──分離独立問題の再燃

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