北朝鮮の「ロケットマン」復活で近づく米朝戦争の足音
Return of Rocket Man
朝鮮中央通信は9月、超大型ロケット砲を視察する金の写真を公開 KCNA-REUTERS
<悪口合戦の再開とミサイル発射の懸念、トランプと金正恩の危険なゲームの行方は......>
ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「ブロマンス」が終わり、再び「炎と怒り」の時が来る──。
トランプは12月初旬、NATO首脳会議出席のために訪れたロンドンで、金を「ロケットマン」と呼んだ。米朝の軍事衝突も危ぶまれた2017年当時、自ら金に付けたあだ名だ。この発言に、北朝鮮高官らは「老いぼれのもうろく状態の再発」と応酬した。
北朝鮮のミサイル発射施設では最近、新手のロケットエンジンの実験を示唆する動きが確認されている。北朝鮮は2019年に入ってから12月21日までに、短距離ミサイル発射を13回行っているが、韓国や日本の懸念をよそに、トランプは問題視していない。だが北朝鮮が約2年ぶりにICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を再開すれば、さすがに黙っていないだろう。
米朝間の行き詰まりは、双方の指導者それぞれの思い込みの激しさに起因している。トランプは、2018年6月に行われた史上初の米朝首脳会談で金は核放棄を約束しており、いずれ実行すると信じているらしい。だが実のところ、金はそんな約束はしていない。
両首脳が署名した共同声明には、北朝鮮が「朝鮮半島の完全非核化に向けて努力する」とある。この表現は目標実現も、目標を達成する意志があることさえも意味しない。さらに「朝鮮半島の非核化」とは、北朝鮮側が主張しているように、核兵器搭載可能な米航空機や米艦船を含む全ての核兵器を、朝鮮半島を射程内に収める全ての場所から排除するということだ。
どんな前進も望めない
もっとも、元CIAアナリストでブルッキングス研究所上級フェローのパク・ジョンヒョンによれば、最大の障害は金だ。祖父の金日成(キム・イルソン)、父親の金正日(キム・ジョンイル)も大国に対して瀬戸際戦術で臨んだが、彼らは引くべき時を心得ていた。一方、金の認識能力や洞察力ははるかに劣るようだ。
金が実務者協議に関心を持たず、再度の米朝首脳会談を、できれば平壌で実施したがっているのは明らかだ。その前提には、一対一の会議であれば、より簡単にトランプを懐柔できるとの読みがある。