ウイグル弾圧は習近平だけの過ちではない
READING CHINESE CABLES
流出したウイグル人強制収容の文書は過去にない「重要文献」 HISAKO KAWASAKI-NEWSWEEK JAPAN
<党上層部の作成した文書が流出したことによって世界的に国家主席への批判が高まっているが、ウイグル人の中国化政策は今に始まったことではない>
11月、中国共産党の新疆ウイグル自治区関連文書が大量流出した。新疆では2016年頃からウイグル人統治に関する行政文書が国外流出していたが、今回のものは党上級機関が作成した「重要文献」だ。
流出文書を公表したニューヨーク・タイムズ紙は11月中旬、「習近平(シー・チンピン)が(ウイグル人への弾圧を)容赦するなと、党幹部を対象とする非公開演説の席で述べていた」と暴露した。そして11月下旬には、国際調査報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)が強制収容を共産党が国家政策として遂行していることを裏付ける流出文献を公開した。こうした一連の暴露によって現在、習近平国家主席への批判が世界規模で高まっている。
しかし、これまでの新疆史を見れば、共産党による新疆「一体化」は今に始まったことではなく、1人の政治家の誤りで片付けられる事柄でもない。1949年の中華人民共和国成立後、人民解放軍の新疆進攻、生産建設兵団の形成、西部大開発、ウイグル語による教育の廃止、「一帯一路」戦略そして今回のテュルク系民族強制収容......と、じわりじわりと「次の一手」を打ちつつ、一体化政策は今に至る。共産党は満人(満州族)が漢人化していったように、テュルク系ムスリムも漢人化できると思っているようだ。
新疆をどう統治していくかについては、共産党政権下でも為政者によって政策の揺れは存在した。ただ習の時代になると、チベットの弾圧に加担した陳全国(チェン・チュエングオ)が自治区党書記となり、現在のような一体化政策が大々的に遂行されていく。
旧ソ連ではいわゆる「少数民族」の出自でも党中央幹部になる者がいたが、中国共産党はウイグル人を「木偶(でく)」として扱うだけである。今月9日、自治区主席でウイグル人のショホラット・ザキルが外国人記者を前に「職業技能訓練センターの受講生は(脱過激化教育を)全員修了した」と述べたが、在日ウイグル人たちは「センター送りにされた身内からは、いまだに一切連絡がない」と語気を強める。ウイグル人政治家を傀儡として使うことも今に始まったことではない。前自治区主席のヌル・ベクリは汚職のため投獄されたが、口封じのためだったとの説もある。