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四中全会と民主とブロックチェーン

2019年11月15日(金)12時25分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

11月5日付のコラム<習近平「ブロックチェーンとデジタル人民元」国家戦略の本気度>にあるように、習近平は中共中央総書記として10月24日に、中国共産党中央委員会(中共中央)政治局第十八回集団学習という会議を開催し、「ブロックチェーンを核心的技術の自主的なイノベーションの突破口と位置づけ、ブロックチェーン技術と産業イノベーション発展の推進を加速させよ」と号令を掛けた。さらに「ブロックチェーン+」という応用を用いて、実体経済や民生に役立てるようにせよというメッセージも発している。

10月28日から31日まで四中全会を開催すると、すぐに上海視察に行っている。こちらをご覧いただきたい。

視察は11月2日から4日まで行われ、11月5日には上海で開催された第2回輸入博覧会に出席して開会の辞を述べている。

興味深いのは、11月2日に視察した上海市長寧区虹橋街道古北市民センターにおける習近平の講話だ。習近平は古北市民センターに集まった庶民たちに「さまざまな民主の形」に関して話している。

習近平によれば、「さまざまな民主の形」には、たとえば、「人民代表大会(全人代の各地バージョン)」などがあり、人民大会堂の机の上に無記名の投票ボタンがあることもまた「民主」だとのこと。また「日常生活におけるさまざまな問題(マンションにエレベーターをつけるか否か、ゴミ捨ての時間や場所はどうするか、マンションを囲っている門は、安全と便利さという観点から何時に開け、何時に閉めるか......など)は、互いに相談しながら決めていくだろうが、それもまた民主の一形態だ。一気に一度の投票で決定するのではなく、その前に相談したり、ウェブサイトを通して意見を述べたりすることもできる。こういった民生問題をどう解決していくのかも社会へのサービスの一つである」などと述べている。

おや?と思うのは、筆者一人ではないだろう。

いま香港で、あれだけ激しく、まさにその民主を求めてデモが展開されているではないか。何を空々しいと、誰もが思うにちがいない。

しかし、11月2日の出来事を輸入博覧会閉幕(11月10日)後の11月13日になって報道しているという事実の中に、習近平の周到な狙いが潜んでいることが明らかになっていく。

上海を中心に「ブロックチェーン+」戦略を推進

11月7日になると、「第二回輸入博覧会の中で上海はブロックチェーン技術を用いて国際貿易の発展を促進していく」という報道がなされた。そこでは上記の、10月24日の中国共産党中央委員会(中共中央)政治局第十八回集団学習における習近平の指示である「ブロックチェーン+」というシステムを用いて、窓口を一つにした社会サービスが発表された。上海市の商務委員会(上海市検問所弁公室)、上海税関、中国人民銀行上海総部、上海市薬品監督局、中国銀行上海支店などが共同で「上海国際貿易単一窓口"ブロックチェーン+"」を開設して民生の便宜を図ることになったというのである。

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