最新記事

香港デモ

香港警察が大学に突入、林鄭月娥の賭けと誤算

Hong Kong's Violence Arrives on Campus

2019年11月14日(木)13時52分
ジェームズ・パーマー

香港中文大学で警察の突入に備える反政府デモ隊(11月13日) Thomas Peter-REUTERS

<警察との衝突による混乱で、一般市民がデモ隊に反感を募らせることを香港当局は望んでいる。しかし実際にはその逆のことが起きている>

反政府デモに手を焼く香港警察は11月13日、香港中文大学を包囲。キャンパスになだれ込んで催涙ガスやゴム弾を発射した。だが、起伏に富むキャンパスはむしろ防御に好都合。学生たちは手製の武器やバリケードで応戦、警察の侵入を阻止しようとした。

100人以上の学生が負傷した。2万人が在学する大学への手入れは、きわめて挑発的だ。ある教授によれば、警察が突入したとき、大学では抗議らしい活動は行われていなかったというから尚更だ。

香港のデモは5カ月におよぶが、学生生活の中心である大学のキャンパスは、取り締まりとは無縁の聖域だった。だが、大陸中国からきた学生はほとんどが深圳経由で逃げ、大学も大半が休校かオンラインの講義に切り替えた。

かつては週末に限られていた抗議デモは、今では24時間続いている。警察の実弾発射も増えた。過去10日間で、デモ参加者一人がビルから転落して死亡し、もう一人が警官に撃たれて重体に陥った。

香港デモ隊と警察がもう暴力を止められない理由

一方、先週北京を訪れ習近平中国国家主席と会談した林鄭月娥行政長官は、デモ隊を「人民の敵」と呼ぶなどますます強硬になっている。平和的なデモは逆に難しくなり、暴力はますますエスカレートするだろう。

香港政府は、この混乱で香港の人々がデモ隊に反感を募らせることに賭けているように見える。だが警察の暴力が子供や高齢者まで巻き込むようになった今、実際には逆のことが起こっているようだ。

香港エリートの一画である金融機関などの専門職さえが、権力を敵視している。米アトランテック誌が指摘する通り、大陸中国の人権抑圧に対する恐怖と反感が、香港市民とデモ隊の結束を固めさせているのだ。

From Foreign Policy Magazine

20191119issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月19日号(11月12日発売)は「世界を操る政策集団 シンクタンク大研究」特集。政治・経済を動かすブレーンか、「頭でっかちのお飾り」か。シンクタンクの機能と実力を徹底検証し、米主要シンクタンクの人脈・金脈を明かす。地域別・分野別のシンクタンク・ランキングも。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、鉱物資源協定まだ署名せず トランプ氏「

ビジネス

中国人民銀総裁、米の「関税の乱用」を批判 世界金融

ワールド

米医薬品関税で年間510億ドルのコスト増、業界団体

ワールド

英米財務相が会談、「両国の国益にかなう」貿易協定の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中