最新記事

アフリカ

絶望の縮図シエラレオネに希望を探し求めて

Hopelessness and Hope

2019年11月1日(金)18時10分
サム・ヒル(作家、コンサルタント)

magw191101_Africa5.jpg

19世紀のアフリカで奴隷として売られる人々 UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE-UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

ところが現実は違った。今やシンガポールは世界屈指の金持ち国家。一方、CIAワールドファクトブックのGDPランキングでは、シエラレオネは229カ国中158位だ。

なぜこれほどくっきりと明暗が分かれたのか。シエラレオネなどアフリカ諸国が経済的に後れを取った理由は諸説あるが、大まかに3つの説に分類できる。「アフリカ人が悪い」説、「白人が悪い」説、「誰のせいでもない」説だ。

まずアフリカ人悪玉説。トランプのようにノルウェーからの移民は大歓迎だが、アフリカ系アメリカ人は出身国に帰れ、などと公言するやからがいるが、オブラートに包んで同様の主張をする人もいる。スウェーデン出身の政治学者ダニエル・シャッツは自国が豊かなのは「プロテスタントの職業倫理」を持つスカンディナビア人の国(つまり生粋の白人の国)だからだと論じている。

これよりはましな議論だが、アフリカ諸国は有能な指導者に恵まれず、政府が十全に機能していない、という主張も聞かれる。アフリカの指導者は多くの場合「親分肌」で、身内びいきと腐敗がはびこる。選挙は不公正で、指導者は有権者の審判を恐れなくていい。これではまともな統治は期待できず、公正なビジネス環境が整備されないため、資本は流入せず、経済は停滞したままだ。

鉱物資源の豊かさがあだに

とはいえ、こうした主張は「被害者たたき」にすぎず、悪いのは白人だ、という声もある。コンゴ内戦を取材していたスペイン人記者は、「アフリカで起きている悪いことは全部、おまえら白人のせいだ」と現地の武装勢力に脅されたという。

全部とは言わないまでも、奴隷制や植民地主義など、白人がもたらした弊害は多い。1884〜85年のベルリン会議で、欧州の列強はアフリカ分割のルールを決めた。結果、民族集団やその勢力範囲を無視して植民地の境界線が引かれ、独立後の国のまとまりにも負の影響が残った。

一方、誰のせいでもない説を提唱するのは、『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレッド・ダイアモンドや生物地理学者のジェフリー・サックスだ。彼らは発展を阻害する要因を地理的条件や気候に求める。

3つの説のどれが正しいと言うより、諸条件が複合的に絡まって現状を招いたとみるべきだろう。シエラレオネとほぼ同時期にイギリスから独立したシンガポールも地理的には熱帯に位置し、多様な民族集団を抱え、腐敗がはびこる地域に位置している。それなのになぜ発展したのか。

主要な交易ルートに位置し、いち早く資本主義経済を取り入れたこと。さらに20世紀の最も偉大な指導者の1人とも言われるリー・クアンユーが初代の首相だったことも大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VW、28年末までにコスト20%削減を計画=独誌

ワールド

英首相、国防費増額の加速必要 3%目標前倒し検討と

ワールド

ロシア、和平協議で領土問題含む主要議題協議へ=大統

ワールド

ロシア、ナワリヌイ氏毒殺改めて否定 欧州主張「虚偽
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中