最新記事

ブレグジット

新EU離脱協定案はイギリス経済に「相当厳しい」内容だった

2019年10月19日(土)12時31分

ジョンソン氏が合意した協定案はメイ氏がEUと合意した案と概ね同じだが、付随する「政治宣言」の内容が薄まったとアナリストは指摘する。

メイ氏の案では今後EUと結ぶ貿易協定について「可能な限り密接な」貿易関係を目指すとしているが、修正案では「野心的な」の一言に置き換えられた。

シンクタンク、インスティテュート・フォー・ガバメントのアレックス・ストジャノビッチ氏は「メイ氏の案であれば、単なる自由貿易協定(FTA)よりも柔らかい協定になっていただろう。現政権が望んでいるのはFTAだとみられ、様相はかなり異なる。英国とEUの間で、特にモノの貿易における規制障壁が残るということだ」と話す。

ホーガン・ラベルズの金融サービス分野専門弁護士、ラケル・ケント氏によると、当初の政治宣言案でも、英国はEU市場にアクセスするためにはEUの規制に縛られるはずだったが、修正案ではその点がよりあからさまになった。英規制当局は、EU離脱後は「ルールを受け入れる」のではなく「作る」立場に立ちたいとしているため、英国とEUの金融市場が分断される可能性が高まるという。

ストジャノビッチ氏は、英国は世界中の国々と二国間貿易協定を結ぶ自由を得るが、ブレグジットによって失われる経済活動を穴埋めすることはできないとみる。「英国がすべての国と協定を結ぶとしても、15年後に英国の国内総生産(GDP)を0.2%押し上げる程度だろう。大半のFTAはGDPにさほど寄与していない」

(David Milliken記者、Mark John記者)


[ロンドン 17日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド「世界最大の宗教行事」で群衆事故、7人以上死

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏に支持訴え 「プーチンは

ワールド

米政権、連邦政府職員200万人に退職勧奨 奨励金提

ワールド

ダフィー米新運輸長官、バイデン前政権下の燃費基準撤
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 3
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 4
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 5
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 6
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 7
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 10
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中